今、木の花には
ドイツ人のライナーが滞在しています。
日本に来て14年になるライナーは、
日本人の奥さんと来月生まれる予定の赤ちゃんと
3人で木の花に移住することを考えています。
今日の昼食後、いさどんと
移住の相談をする機会を持ちました。
今回は、その二人の対話を紹介したいと思います。
—
いさどん:
ここの生き方は、
僕が考えたことでもなければ、
どこかに見本があってできたものでもありません。
僕らはコミュニティといったものに
興味がなかったから、
外国にあることも知らなかった。
ただ新しい生き方が必要だと思って、
16年前に皆で暮らし出しました。
何もわからず、
ただ大事だと思って歩んできました。
少しずつわかってきたのは、この生き方は、
世の中の人々に
次の生き方の見本として示すためにあるんだということ。
今まさしくそういう時代が来て、
ライナーのように気づいた人たちが
ここを訪れるようになりました。
最終的には、
木の花のコミュニティのためにあるのではなく、
この国のため、世界のため、地球のために
あるのだと思っています。
僕たちは、ここのメンバーとして暮らしていますが、
目的は地球が健全になること。
今ここで暮らしているから、
生涯このコミュニティで出会った人たちと
仲良く暮らして終わっていくということではありません。
もっと広い人たちと新しい家族として暮らすために、
いろいろなところへ行くかもしれない。
キリストの教えを受けた人たちが
世界中へ行ってその心を広めたように、
私たちもそういう考えでいます。
自然はいろいろな姿をしています。
木があったり、動物がいたり、
虫がいたり、いろいろな形を取っています。
一つだけが単独で存在しているのではなく、
いろいろなものが関わりながら、
お互いを存在させ合っています。
そこでは全てが平等で、自分の力を皆のために使い、
皆が自分を活かしてくれるという関係をつくっています。
ここでも全く同じように、
全てを共有し、皆が平等に生きています。
ライナー:
それは、ガンジーの伝記を読んだ時に感じました。
彼はヒンデューでありながら、世界市民だったんです。
彼は地球はONE、生命本体はONE、
石であったり、風景であったり、
動物全体であったり、ひとつ潰したら、
僕のひとつも壊れるという考えです。
ガンジーは僕に
こういう考えのきっかけを与えてくれました。
いさどん:
僕も、ガンジーに対して共感を持っています。
インドのマザーテレサやガンジーは素晴らしい人でした。
あの人たちはあの人たちのように役割を果たしてくれました。
だから、この木の花というところは木の花らしく、
これから世の中に役割を果たしていく。
彼は、本当に僕の尊敬する人です。
ライナー:
僕も社会貢献や他の人へのサービスに
興味を持つようになりました。
ここに住むことは、
人生の大きなチャンスだと思っています。
いさどん:
ここはとても大切な生き方をしています。
こういった生き方を誇りに思って
皆生きていると思うんですが、
世の中の人たちはこの大切がまだよくわからないから、
理解されないこともあります。
しかし、理解されなくても、
自分たちの中に「本当に大切」という
真実の心が湧いていれば、
誰でもできると思うんです。
仕事は、今現在何をしているのですか?
ライナー:
ずっと10年間、
ITのヘッドハンティングの会社を経営しています。
いさどん:
その仕事はどうしていくつもり?
ライナー:
自分のビジネスをギブアップして、
新しい道を始めようと思っています。
いさどん:
僕が考えているのは、木の花のメンバーイコール
農業じゃなくてもいい。
ここは多様性あるところだから、
社会のためになることなら、
いろいろな意味でいろいろな活動が必要だと思っています。
その人の能力が一番発揮できるところ、
そして皆に貢献できる生き方をすればいい。
自分が一番やりたいこと、
一番能力の高いこと、皆がその人に望むこと、
そういったいろいろなことを皆で考えて、
一番ふさわしい生き方をしてくれたらいいと思います。
それについてはどうですか?
ライナー:
素晴らしいですね。
いさどん:
現在の活動をこちらに来て新しい形で続ける、
ということもできます。
「木の花はこういうところ」と言って、
新たに入ってくる人をそこの中に取り込んでしまう、
木の花の在り方にしてしまう、
ということではないんです。
木の花に新しい人が入ってきて、
その人の能力が活かされれば、
木の花は大きくなり新たな多様性になる。
木の花というのは、
ひとつの家族というよりも村だから、
村の中にはいろいろな人がいて、
いろいろな機能があり、
それが連なってひとつの村ができるという考え方なんです。
だから、あなたの意思も尊重するけれど、
皆で一番良い方法、ひとりひとりが
一番役に立ってその人の能力を活かせる、
ということを考えていきます。
自分で「こうだ」と決めないでいくと、
自分の思っていることよりも
さらに広い可能性が開けることになる。
知らないことに出会うこともできます。
だから敢えて、私たちはビジョンを決めて持ちません。
皆で多様性を大切にしながら生きていくと、
結果として事が起きてきます。
ライナーは木の花に来ました。
私たちは、この国が変わっていくための
きっかけとなるような場所を
日本中につくろうと思っています。
いろいろなコミュニティができたら、
そのコミュニティを全部自分の家として回っていけるような、
そして皆が必要なところで
必要な役割をしていくような仕組みを
日本中につくりたいと思っています。
コミュニティは皆つながっていかないと
意味がありません。
ライナー:
皆に使ってもらうと、
一番パワーがありますよね。
日本のメーカーは「自分だけ」という考えで、
共有するということがほとんどないですよね。
いさどん:
ファミリーの中にはルールがありますが、
それは素晴らしいルールです。
でも、普通の人にはちょっと難しいかもしれません。
ガンジーの思想に共鳴している人なら大丈夫。
自分のものも人のものも皆で共有していく、
という考え方です。
自分のものが皆のものとなる代わりに、
皆のものは自分のものとして大切に活かしていきます。
自分のもので生きている人は、
人生を自分のために生きていかないといけません。
例えば、夫婦2人で暮らしていて、
奥さんに赤ちゃんが産まれ働けない時に、
自分しかその家族を支えることができない。
でも、自分も具合が悪くなった時に困ってしまう。
しかし、皆がいれば、
そういった人たちも
全て安心して生きていける仕組みができます。
自分の健康、お金、能力、
全てを皆のものだと思うということは、
自分が病気をした時も、
皆の病気だから皆が考えてくれます。
そういった皆が安心して生きていける仕組みが
一番大切です。
外国でもそうだけれど、日本には自殺者が多い。
お年寄りも年老いていくのに、
安心して老後を迎えられない。
それは、お金やものを自分のものと考えているから。
分かち合う、助け合うという仕組みをつくると、
本当に皆が安心して暮らせる世の中になります。
ライナー:
話していて、心が同じだと感じます。
多様性があればあるほど、私に合うんですよ。
私は多様性の大きなファンですから。
いさどん:
多様性というのは、多様性のひとつずつが
対立していたら多様性の意味がありません。
別々のいろいろなものが連なっていくことによって、
多様性からもうひとつ大きな命が生まれる。
そういう意味では、多様性というのは、
非常に平等で個人の個性を大事にする。
でも、もうひとつ大きな命の中のひとつだというと、
たったひとつだから狭い、ということも言える。
多様性というのは、
広くて個性を活かし平等で、そして狭い世界。
それが同時に成立する世界。
それをここでは実現しているんですよ。
実は、ここに来る人は誰でもいいんです。
ここに縁があって来る人たちは、
私たちが選ぶのではなく、
神様が人間の中からトッピングしているんです。
神様は自分の意思をここで表現しようとしています。
今、琵琶湖にこういったところを
つくろうとしています。
そこには日本一の湖がある。
湖の水を取るとへっこんでいるでしょ。
これは女のひとです。
ここには日本一の山、富士山があります。
これはとがっているから男のひとです。
ちょうど日本一の山と日本一の湖。
男と女。
これが今、同時に進もうとしています。
琵琶湖の話も他のプロジェクトの話も、
僕が考えたのではなく、いろいろな人が来て、
その話をここに持ってくるんです。
私たちは、それをつなげているだけです。
ライナー:
琵琶湖のプロジェクトは、
基本的にホテルを管理することですか?
それとも、
そこでコミュニティをつくることですか?
いさどん:
そこを所有している会社の社長は、
こういった生活の場を
そこでつくってもらうことを考えています。
木の花のような農を中心として暮らす村をつくったら、
世の中に対して農業や心の勉強を提供したり、
今自殺を考えている人たちが
心のトレーニングをして
社会に戻るような場所になったりと、
いろいろなことを考えています。
そういったものがホテルを中心にしてできたら、
そのまわりにお年寄りやいろいろな人が家族ごとに暮らす。
ホテルの中にあるコミュニティとしての村だけではなく、
外の地域にも点々と家族がいて、
ゆるくつながり、そこにまた村をつくる。
コミュニティというと、
「一か所の場所にその人たちだけ」
という印象が今まで強いでしょ。
そうではなく、一般の地域の中に
いろいろな人たちやいろいろな家族がいて、
そことコアになる村がつながりながら広がっていく、
というイメージを持っています。
ライナー:
交差点みたいな感じですね。
いさどん:
そうそう。
「私たちはここには入れないけれど、
ゆるくつながりたい」という人たちもいていいんです。
酵素の働きのように、
自分たちの考えを広めていくことによって、
対立するのではなく、よりつながっていく。
古くなったものを新しくしたり、
古くならないようにいつまでも若く保たせる、
くっついているものを離して
別の働きをさせる、そういう役割があるんです。
その村は、社会をつなげ、
知らなかった人たちに
新しい仕組みを伝えていくイメージがあります。
もちろん木の花も今、そういう役割をしていますが、
日本中にそういったセンターを沢山つくっていく。
会社を経営している人たちや大学の先生、
いろいろな人たちをつなげ、
そういったセンターをつくろうと思っています。
ライナー:
私も木の花の活動に
大希望のエネルギーを感じます。
私の東京の小さい活動よりも、
そういう大希望の活動に参加するほうが
大切だと思っています。
いさどん:
私たちと同じですね。
自分を活かすためには、自分だけに限定せず、
いろいろな人とつながることで、
もっと大きなことができる。
自分自身に捉われないで、
もっと大きな命のつながりとして観ていくことが大切です。
皆で助け合って新しい社会のために生きていく、
そういう考えのある人なら実は誰でもいいんです。
皆家族だから。
—
終始、和やかな雰囲気の中、
いさどんとライナーは話していました。
それはきっと、世のため人のために生きる
木の花ファミリーの在り方に共感し、
新しい人生を出発しようとしている
ライナーの謙虚な心が、
その穏やかな空気をつくり出していたのでしょう。
自分のために生きる人生から、
地球上の皆のために生きる人生へ。
さあ、皆さんはこれから
どんな生き方を選んでいきますか。