「私、もう帰りたいんです」

朝起きてくるなり、
「私もう帰りたいんです」と言うケア滞在中のちよこさん。
早速話を聞くことにしました。

ようこ:
ちよこさんは3月27日からここに来ているから、
今日で10日になるんだね。

いさどん:
まだ10日しか経ってない?
毎日あまりにも沢山のお話をするので、
もう3ヶ月くらい付き合ったような雰囲気がするけれど(笑)。
僕は、多い人で1週間に1回面談するくらいで、
普通は2週間に1回くらいしかお話しないんです。

ちよこさん:
もうここにいても辛いので、兵庫に帰りたいと思っています。

いさどん:
ここで提供することを受け取り、
キャッチボールするということが出来ない時には、
どんなにこちらが改善したらいいと思っても、苦痛になってしまいます。

しかし、どこへ行っても自分の心はついていきますからね。

ちよこさん:
兵庫の娘のところへ戻っても辛いのはわかっているんですけれど。。。

いさどん:
家へ戻っても同じことが起きるとわかっているんですね。

ようこ:
薬を飲んでも飲まなくても辛いのと同じ話ですね。
ここにいてもどこへ行っても辛いと言うのは。

ちよこさん:
霊障のことはもうそんなに気にならなくて、
今は自律神経が思うようにコントロール出来ないんです。
これさえ取れたら。。。

いさどん:
この間までは原因が霊障でした。
そのうちに、自律神経から原因が違うことに変わったりするものです。

ちよこさん:
昨日もいらいらして眠れなくて。
薬を飲んでも効かなくて、寝たり起きたり寝たり起きたりで。
その後また薬を飲んだら2時間くらい眠れて。。。

いさどん:
じゃあ、薬が効いたから良かったですね。
そこで「ああ、良かった。効くようになった」と喜べばいい。
良かったのに、どうしてまた具合が悪くなっているんですか?
以前は薬を飲んでも全然効かなかったのが、
今はまた効くようになって良かったじゃないですか。

一つ言えることは、
どんなことがあってもちよこさんは不満になるということです。
それが心の傾向としてあります。何でも不満。
「おかげさまで、ありがたいです」と感謝する心がありません。

今だって、以前より落ち着いて話が聞けるようになっています。
でもそう言うと、きっとここで、
「いや、それは外から見えるだけで、
中はそうじゃないんです」と言うんでしょう(笑)。
何しろ、「そうですね、そうやって見ると少し気が楽ですね」
という心が生まれてきません。

兵庫に帰るという話も、
ここから自分の娘さんの家へ台風を持っていくようなものです。
そんなことは誰も喜んでくれませんよね。

ちよこさん:
娘が病んでしまうかもしれません。

いさどん:
僕は、その人が「これじゃいけないな」と
そこから抜け出そうとするきっかけを
提供してあげることしか出来ないと思っています。
実際に物理的な病気については、物理的な対処が必要ですが、
物理的な病気の奥にある心の癖も同時に見ていかないといけません。
物理的なことだけで、病気が起きているわけではないのですから。

物理的なことを解決すれば良くなることも中にはあるでしょうが、
ほとんど心の問題が形になって表われているものです。
それをしっかりと見ていき気づきを提供したいと思っていても、
本人がそのことに気づかないといけません。
これは薬ではなかなか取れないものです。

ちよこさん:
他の人にも同じことを言われました。
薬も他人も何とかしてくれない、最終的には自分だけだと。

いさどん:
自分だけだと言いますが、
ここにはこうやって付き合ってくれる人もいるわけです。
しかし、あなたの人生ですから、
最終的には自分がそこを乗り越えていかないといけません。
あなたの人生という旅の上で起きている出来事ですから。
そういったことを何とも思わない人もいますし、
逆にありがたいと思う人もいます。

ちよこさん:
いつも自分中心になってしまって、他が見えないんですよね。
だから、健康なほうに持っていけないんです。

いさどん:
持っていけないというのが今の状態です。
それを「嫌だ嫌だ」というところに
増幅させる心がちよこさんの中にあります。
「今はそういうふうに持っていけない状態なんだな」と思うだけでいいんです。

「薬を飲むのをやめなさい」とか
「~するのをやめなさい」と言われているのではなく、
何でも出来る環境にちよこさんはいるわけですから。
今どういう環境が与えられているのかといったら、
まわりが一切負荷をかけないで、
自分の状態が忠実に外に出る環境にいるわけです。
ということは、自分自身の中を見ている状態です。

それで、「自分はこうだったんだ、
その部分をこう変えればいいんだな」というところに持っていければいいんです。
そういういい環境にいるのですよ。

僕は、薬が効かないのが一番いいことだと思っています。
薬が効くと、自分の中にある種を誤魔化してしまうんです。
その種を見せるために問題事は起きているのですが、
薬を飲んでそれを押さえてしまうと問題事が出ないから、
「薬を飲めばいいんだ」ということになり、いつまでたっても種が取れません。
種があるということにも気づけません。

しかし、薬が効かないというのは、
種をはっきりと見せてもらっている状態なのだから、
後は種を取ればいいという作業になってきます。
種がある限り、薬で抑えようが他のところへ問題事を持っていこうが
辛い状態は起き続けますから。

ちよこさん:
でも本当にいらいらして、一晩中いても立ってもいられないんです。

いさどん:
そういう時はそういうふうに過ごせばいいんですよ。
それを「嫌だ嫌だ」と言うのではなく、
一晩でも二晩でもそういうふうに過ごしていくと、
疲れてきて眠れるようになるんです。
つまり、座ったり立ったりということを一晩中やっているということは、
まだ自分に力があるということです。
それを消費してやると、人間は確実に
「ああ、疲れた」と眠れるようになります。
ちよこさんの場合、そのエネルギーの消費がまだ足らないということです。

ちよこさん:
でも、もう帰りたいんです。

いさどん:
帰るのは一向に構いませんよ。
ただ、話を聞いてみれば、
娘さんがそれで歓迎するとは思えません。
私たちにとってちよこさんは、心に余分な距離がない関係です。
だから、「お母さんがそんな状態では家が大変です」とか
「お母さんだから良くなってほしい」という感情がありません。
私たちはただ忠実にちよこさんの状態を伝えているだけですから、
ここでの私たちの関係はいい距離だと思います。

ところが、血縁の家族の関係だと距離が近いので、
余計にお互いの気を病むんですよ。

ちよこさん:
そうなんです。娘がかわいそうで。

いさどん:
娘がかわいそうと言う割には、
そのおみやげを持って今から家へ帰ろうとしているわけですから、
それは賢明なことではありません。
ちよこさんは、大変なことをわざわざしようとしています。

ちよこさん:
また、いさどんに怒られてしまって。。。

いさどん:
怒っていません(笑)。
一度も怒ったことはありません。
人が怒っていないのに、「また怒られる」と言って
それを知らない人が聞くと、「あそこではいつもそうやって叱るんだ」とか、
「あの人はかわいそうに、怒られているんだ」となるんですよ。
僕が被害妄想になりそう(笑)。

ちよこさんは、「大変だ、大変だ」と
問題事を増幅させているのだから、
冷静に自分を見ていかないといけませんね。

ちよこさん:
それに集中出来たらいいんですけれど。。。

いさどん:
だから、自分で出来ない時には人に委ねればいいんです。
それは、人の言うことを聞くということです。
ちよこさんにはこちらが言うことをはねつける傾向があります。
「あなたは今こういう状態ですから、こういうふうに思いましょう」ということに対して、
「でも私はこうなんです」と反論します。
「そうですね、そう考えればいいんですね」という言葉が出てきません。

ちよこさん:
それが沁みついているんですね。

いさどん:
そうなんです!
今、ちよこさんはいいことを言いましたね。
そこで本当に気づいてもらいたいのは、
ちよこさんは自分がもらっているものを全部はねつけているということです。
この状態だって神様からいただいているんです。
「あなたの中にこういうものがあるよ」ということを忠実に表現してもらっているんですよ。
この世界にあるものに無駄はないわけですから。

「私の中にあるものがこうやって表現されて
、私に気づきを与えてくれているんだ」と気づいたら、
ありがたいという気持ちが湧いてきます。
今のちよこさんにはそういう感謝の心がありません。

ようこ:
「貧乏神も厄病神も神のうち」の話の中でも、
彼らは「ありがとうという言葉が一番嫌いだ」って言っていましたよね。
反対に彼らは「嫌だ嫌だ」という心は大好きだから、
彼らに「私のところに来て下さい」と言っているようなものですよ。

いさどん:
実際に貧乏神も厄病神もこの敷地の中には入ってこられませんが
あなたの心の中に住み着いているものについてはどうすることも出来ません。

ちよこさん:
だから、ラップ音がポンポン鳴るんですね。

いさどん:
ラップ音がポンポン鳴るって言ったって、
まわりの人には何も聞こえていませんよ。
でも、ラップ音がしたって別にいいじゃないですか。
それを「ラップ音がするんですよ」と
すごく辛そうに苦しそうに表現するのがちよこさんの癖です。
耳鳴りは誰でもしているものですが、
慣れているものには気になりません。
珍しい人にとっては耳鳴りを大ごとのように感じるものです。

そういう意味でいったら、当たり前だと思ったら何でもなくなるんです。

ちよこさん:
そうですね。ラップ音の話は余分でしたね。

いさどん:
以前のちよこさんは、
「ラップ音がしてラップ音がしてたまらないんですよ」と僕に訴えていたじゃないですか。
でも今はそれを「ラップ音の件は余分な話でした」と言えるだけ進歩しているんですよ。
それを評価する心がないと、ラップ音がなくなっても、
また次の問題事を探すようになります。

一つ一つどんどん消化していって、卒業していけばいいんです。
それを「嫌だ嫌だ」と自分で抱え込み、
なくなると次の新しいことを探すんです。

僕がちょっと困ったものだなと思ったのは、
「ここではどうにもならないんです。だから、娘のところへ帰ります」と言って、
では娘さんのところで何が起きるのかと考えたら、
その方が恐ろしいことです。
私たちはあなたが病んでいても、
こうやって冗談を言ったり、
「こういう心の持ち方をしたらいいですよ」という話をするだけで、
私たちが病むことはありません。
しかし、あなたが娘さんのところへ行って家族までが病み出したら、
そちらの方が恐い話です。
でも、ちよこさんは平気でそういうことを言うんです。

ちよこさん:
でも、ここにはいづらいんです。

いさどん:
それはあなたがいづらいだけで、
私たちはこういった対応には慣れていますし。
ちよこさんが病んでいるのに私たちも一緒になって病んでいるようなことでは、
とてもこんなことは出来ません(笑)。

確かに、辛そうなちよこさんの顔は、
私たちにとってもあまり良い景色とは思いません。
でも、それはあなたの問題であって、私たちの問題ではありません。
私たちは私たちで毎日「ありがたい」と思って生きていますから。

ところが、ここを離れて娘さんまで病んでしまったら、
それは社会にとっても問題です。
娘さんだって、健康になって帰ってきてほしいはずです。

こうやって客観的に自分を見ていく話をしていれば、
ちよこさんも落ち着いてきますよね。
あなたが一人でいると、ラップ音も復活するわ、
過去生が何だの霊能者が何だのという話になってしまうのですから、
そういう不安な方へ自分を誘導するのではなく、
自分を落ち着かせるように
客観的に自分を見ていく訓練をするべきだと思います。
そうすれば、自立神経も安定してきます。
結局、ちよこさんの外では何も起きていませんから。

ちよこさん:
でも、やっぱり死にたくなるんです。

いさどん:
最後には死んでしまう人もいますが、
そういう人は広い意味で、
自分が死んだらどういうところへ行くのかということを捉えていません。
今の苦痛から逃れたいばかりで、心が狭い状態です。
心が狭い状態の人は生きていても狭い人生を送ることになりますが、
死んでも魂は死にませんので、
狭いところに自分が封印されているようなことになるのです。

生きていればこうやって状態が良かったり悪かったり、
人の話を聞けば少しは楽になったりしますが、
こんなことで死んだらそういうことはなくなりますからね。
それはそれで恐ろしい世界なんですよ。
あなたは今までそういう勉強をしてきて、知っているのだから。

あなたが死んだ先を知っているということはいいことです。
それを知らなかったら、
たちどころに逝ってしまう人もいます。
僕がいくら「それはダメですよ」と止めたところで、
逝っちゃうんです。
それは不幸なことです。
娘さんのところに行く以上に不幸なことです。

もう一つ気づいてほしいことは、
僕もようこちゃんもあなたが楽になるように一生懸命お話しています。
しかし、一番楽にならなければいけないあなたが、
自分を楽にさせないようにしています。
もっと自分を楽にしてあげないといけないのに。

これって結構面白いでしょ(笑)?
すごく愉快な世界です。
「楽になりたい!」と言う人が自分を辛くしていて、
楽な人が自分のことではないのに、
一生懸命その人が楽になるようにしている。
これって面白い景色じゃない?
人間にはこういうところが沢山あって、僕は「変な生き物だな」と思うんです。

ちよこさん:
。。。そうしたら、もう少し頑張ってみます。

いさどん:
何回も言うようだけれど、
頑張るというのは今の状態を押さえつけていく状態です。
頑張ることもいいですが、
ありのままを受け入れていくことが大切です。
ありがたいことに薬は効かないんですから、
今のありのままの自分を受け入れていくしか仕方ありませんよね。

例えばどこかが痛い時に、
痛み止めを飲んだら楽になるかもしれませんが、
痛み止めがない場合や痛み止めが効かない状態なら、
痛みと付き合うしかありません。
それはすごくいいことです。
そのことを味わいなさいということです。
それで人間は成長することが出来ます。
痛み止めがあることにも感謝することが出来ます。

それを自分の中に受け入れた時に、
次のステージに進んでいくことが出来ます。
難しいかもしれませんが、受け入れるということです。
自分の中に種があるのですから、それを認めるということです。

だから、頑張るのではなく、
「先を楽しみにして、もうちょっといようと思います。よろしくお願いします」でいいんですよ。

ちよこさん:
そうですね。よろしくお願いします。

ようこ:
まだ10日しか経っていないんですから。

いさどん:
たった10日ですよ!
僕はさっき、ようこちゃんからそれを聞く前には、
ちよこさんが来てからもう3ヶ月も経っていて、
3ヶ月以上ここにいる人はほとんどいないから、
「いい加減あなたは卒業しないといけませんよ」と言おうと思っていました(笑)。
でもたった10日なんだよね。

これは逆に言えば密度が濃い生活をしているのですから、
1ヶ月もしたら随分変化するんだろうと思っています。
10日でちよこさんのコメントが大分変わってきていますよね。
霊障のことは忘れてきているし、
ラップ音も「あれは仕方がないんです」というところまできています。

始めは、ラップ音と霊障の話ばかりで、
僕に「お祓いして下さい」と言っていました。
お祓いは効かないし、薬は効かない、そして死んだらどうなるか知っている。
これはもう最高ですよ。もう完璧(笑)!

ようこ:
あとは、素直に人のいうことを聞くだけ!

いさどん:
そうそう。そんなところでどう?
ちょっと笑えるようになりましたね。

ちよこさん:
わかりました。やってみます。ありがとうございました。

いさどん&ようこ:
ああ、良かった、良かった!


「私、辛くて辛くて」

ケアスタートしてから1週間が経過した、
64歳のちよこさんといさどんの朝の会話です。

ちよこさん:
いさどん、私辛くて辛くて、
薬を1錠のところ3錠飲んでしまって。。。
でも薬が効かないんです。

いさどん:
最低1ヶ月くらいは、
新しい環境で自分を見つめるという作業をしないと。
今は薬も効かない状態なんだから。

「辛くて辛くて」と言うけれど、
一度そこを抜けられて、
そのコツを自分で掴めたらチャンスです。
それを、「もうダメだ、もう死にたい。辛くて薬を多く飲んでみた。」
薬を飲んでも飲まなくても効果は同じなのですから、
それこそチャンスです。
そこで自分を客観的に見る眼を育てていけば、
越えていく力が生まれてくるものです。

ちよこさん:
でも、本当に辛いんですよ。
起きたり寝たり起きたり寝たり。

いさどん:
それはもう何度も聞いているから、十分理解しています。
確かにそうだろうと思います。
骨折をしている人に「しっかり歩きなさい」と言わないでしょ。
「あなたは足が折れているんですから、
骨がしっかり固定するまで安静にして下さい」と言いますよね。
でも、「代わってあげましょう」というわけにはいきません。

あなたが辛いのは十分わかっています。

ちよこさん:
すいません。それが私の口癖で。。。

いさどん:
そこです!
その癖に気づき、「またそういう方向に行っているな」と
自分でコントロール出来るようになったら、
大分ちよこさんの状態が変わると思います。

ちよこさんは、
「自分に何かがとりついているんじゃないか」と言いますが、
病気というのは気が病むと書き、
心にとりついたものです。
霊とかそういうものではなく、
心の癖にとりついたものだと僕は思っています。

お祓いしてとれるものなら、それはそれでいいでしょう。
しかし、心の癖は自分の中から湧き出てくるものです。
そうしたら、その癖を取り去る作業をするのが一番いいことです。
仮にお祓いで一時的にとれたとしても、
癖はまた出てくるものですから、
また同じことを繰り返すことになります。

ちよこさん:
その癖は前世からのものですか?

いさどん:
その前世というのは何ですか?
そういう前世だとか霊能者だとか得体の知れない話ばかり、
ちよこさんはするんですよ。

そういったことよりも大切なのは、
今の自分の心が自分に対してどういうものをもたらしているのか、
日々の送り方が自分に対してどのようなことをもたらしているのか
をしっかり見つめることです。
バランスの良い、ものの捉え方が
出来るような自分を育てていくことです。

私たちは魂の存在ですから、きっと前世もあったでしょう。
しかし、そういうことの延長に
確実に今の自分があるのですから、
前世がどうだったかなんて
不確かなことは知る必要がありません。
今の自分を見さえすれば、
問題事も見えてくるわけですから。
今の状態をどうするかだけです。
今の自分としっかり対話していくことです。

そこで、「そうですね、
そういうふうにしないといけませんね」
という言葉や姿勢が出てくると、
状態が変わってくるものです。
しかし、今のちよこさんは、
「そんなこと言ったって、私はこうなんです」
って全部はねのけてしまい、
自分が混乱する方向へ発想を育てているという状態です。

その人の人柄がその人の人生をつくっていくんです。
ちよこさんは、自分自身を誤魔化して
他のせいにしている状態です。

ちよこさん:
。。。頑張ってみます。

いさどん:
まあ、今は頑張らないといけないのですが、
そのうちに「頑張らない」ということを覚えるといいですね。
頑張るというのは、
起きていることに対して対抗している状態です。
大切なのは、今の状態を受け入れるということです。

今そういう状態が起きているのには理由があるはずです。
この世界の出来事は全て神様の意志であり、筋道が通っています。
「ああ、きっと今の私にとってこれが必要なんですね」と
それを受け入れるということが大切です。

神様は善意ですから、
「善意でこういったことを起こされているのに、
私は不愉快に受けとっている。
その受け取り方が間違っていたんですね。
これからは何でもいただきます」
という心になっていくと、そういったことから卒業できます。

起きることに不満ばかり言っていても、
その種はどこにあるのかといったら、
自分の心の中にあるのです。
この世界は自分を見せてもらっている鏡みたいなものですから、
自分を知って学んでいくことが生きている目的です。

心の病気をどうやってまわりがサポートしていくのかといえば、
心の支えとしてサポートしていくしか方法はありません。
そして、お医者さんの薬が足しになって効けばいいのですが、
今はそれも全然効かない状態ですから。

こんなに薬が効かない人に会ったのは初めてです。
ある意味良いことですが、
普通、量を無視して飲んだらふらふらになっています。

自分で出来ない時には、
人の言うことを聞いて治すしかありません。
その時に、「本当に治るんでしょうか?」と聞くのは、
相手を信じていないということです。
これに賭けようという心がない。
「信じるものは救われる」というのは本当ですよ。

ちよこさんは、同じことを何度も繰り返しているでしょ?
「また同じことをやっているよ」と
自分で笑ってあげるくらいにならないと。

日にちが薬です。
せっかく自分の中で積み重ねていこうとしても、
否定的な心がそれを逃がしてしまいます。
また御破算にして最初からやり直すことにもなるのだから。
薬が多少でも効く人だったら、それもいいかなと思いますが、
ちよこさんの場合薬が効かないのですから、
それだったら飲んでも仕方がない話です。
そして、薬から離れていくチャンスにもなります。
何でも良い方向に捉えていきましょう。


ケア滞在者に接する時の心構え

今、ここでケア滞在をしている人は7人います。
これは過去最高の人数です。
今まではケアの「主治医」であるいさどんや、
サポートメンバーのまりちゃんやようこが
主にケアの人と接することが多かったのですが、
ここまで人数が増えてくると、
メンバー一人一人の関わり方が非常に重要になってきます。
そこで今回のブログでは、
いさどんが語った「ケア滞在者に接する時の心構え」についてシェアしたいと思います。

問題事は、ある意味ではその人の自己表現であり、
本当の自分を取り戻すための負の部分のエネルギー消費です。
それは膿みたいなものですから、
全部出し切らないと改善に向かいません。

多少は相手の状態を粘り強く伝えてあげることも必要だけれど、
それはあくまで多少であって、
強く伝えるとそれ自体が相手にとって苦痛になることもあります。
だから、「もうちょっとしたら良くなるのに惜しい」という発想を捨て、
心が内省に向いていないとなったら
いつでも手放してあげられるような心構えが大切です。

こちらが提供出来る客観的な情報を受け取り、
それを自分の中に積み重ねていける人や、
自分の中の負のエネルギーをどんどん消費していく人に
こういった環境を提供することが大切です。
そういう意志がない人に提供しても、
一見優しさのようだけれど、
実は余計な苦痛を与えたり、
場合によっては対立を生むこともあります。

しかし、あまりにも事務的であっさりしていては、
その人が改善する手助けにはなりません。
多少の負荷をかけ、
その人がチャンスを掴む機会を与えるということは必要です。
でも、相手に無理強いさせるような行動は避けるべきです。

「あなたのありのままの状態でいいんだよ」と言う人もよくいますが、
それも偏った見方です。
そういうやり方でそのままの状態でい続けることは、
その人が次のステージに行くための可能性を潰すことにもなります。

だから、多少の負荷をかけますが、
それもキャッチボールで、
その負荷がその人を新しいステージに導く場合にはそれも必要です。
しかし、そうでない場合には、
その人が自分の心にふさわしい場所に行くことを
認めてあげることが大切です。

ここは改善していく場であり、
そのまま改善しない人がい続けるところではありません。
改善していく場だから負荷をかけますが、
その状態でいることがその人にとってふさわしかったり、
もっと悪くなっていく意識を持っている人には、
それを「ダメだ」と言わず、
その人にふさわしいところに送り出してあげることも大切です。

そのことによって、人生という旅の中で
自分の中にある種から発生するエネルギーを
消費させていくことが出来ます。
問題事は自己表現であり、
負のエネルギー消費ですから、
そういうふうに気長につきあっていき、
負のエネルギーをどんどん出す環境を与えてあげることも大切です。

負のエネルギーを消費することによって、
その人は「自分にこれはもういらない」と気づいていくことが出来ます。
それを全部消費し切ってしまえばいらなくなり、
そして調和的になります。
逆に、種がある人が調和的な中にいると、
それ自体がいらいらして自己主張したくなります。
しかし、種はエネルギーを出してしまえば、
種として機能しなくなるから消えてしまうのです。

だから、ケア滞在者に接する時には、
「治してあげよう」と思うのではなく、
「あなたは今こういう状態ですよ」と
客観的な情報を提供し続けることが大切です。
そして、その人が自分で自分を客観的に見て、
冷静に自分を判断出来るようになったら、
病気の状態は自然となくなっていくものです。

問題事は全部自分が起こしたものだから、
本人がそのことを受け取らないとどうしようもありません。
「もうちょっとしたらこの人は良くなるのに」という熱い情熱ではなく、
冷静にケアに望み、その人の問題をその人に預けることが大切です。


心のリフォーム「おやじの館」

ある日のこと。
ここを訪れた方から、
「おやじの館って何ですか?
おやじが沢山いるんですか(笑)?」
と質問されたいさどんはこんな話をしました。

いさどん:
僕は5月で59歳になり、
来年は60歳になります。
僕の人生は20年単位で変わり、
20歳の時に社会に出て一般社会の中で生活をしました。
40歳で建築内装業の会社をやめ、
今のような生活が始まりました。
そして、60歳から新しい人生が始まります。
これから何をするのかといったら、
自殺者をなくす活動をしようと思っています。
今ここで行われているケアの延長なのですが、
自殺者をなくすための家が「おやじの館」です。
名前はもう決まっているんです。
だから、おやじ対象の場所ではなく(笑)、
このおやじが中にいて訪れる人の相談に乗ります。

死ぬということは人生最後のセレモニーですから、
死に方を健全に全うにしないということは、
人の尊厳が失われているということです。
それを保って死を迎えることは大切なことです。
死ぬための心構えをつくる場所をつくらないといけないと思っています。

1週間前からここにケア滞在をしている64歳のちよこさんも、
来た当初は「生きているのが辛くて辛くて、
死ぬことばかり考えてしまうんです」と言っていました。
今朝も、「ああ辛い、ああ辛い」と言うものだから、
「辛ければ、無理せず薬を飲んだらいいよ」と言いました。

お昼ご飯の時に彼女に会ったら、
「ああ辛い、ああ辛い」とまた言うものだから、
「どうしたの?」と聞くと、
「薬が効かないから辛いんです」と言うんです。
そこで僕が、「薬を飲んでも飲まなくても辛いのなら、
飲むのをやめておこうよ」と言いました。
そうしたら、ちよこさんは笑っていました。

こんなふうに僕は
冗談を言ったり半分ごまかしながら、
薬をなくしていって、
正常な精神の方に語りかけ
それを引き出すということをしています。
お医者さんがなぜこういうことをやらないのかと言ったら、
そういった考えがないからです。
それに時間と手間はかかります。
手間はかかっても、
僕はこれが一番いいと思っています。
副作用もありません。

ボロボロになっている人の心を新しくつくり変えて、
新しい人生を見せてあげる「心のリフォーム」が僕の役割です。
心の問題を持っている人がここに沢山訪ねてきますが、
心がボロボロになって自殺する人たちがいるのは
とても不幸なことです。
皆が自分というものを取り戻し、
心身ともに健全になっていけば、
健全な社会が訪れます。
人々がともにつながり安心して豊かに暮らせる世界。
それが「おやじの館」のおやじの想いです。


自分の中から湧き出る思いがあれば

1月6日から心と体の体質改善のため
ケア滞在中の19歳のりおちゃんが、
ここに来てからもうすぐで丸3ヶ月になります。
滞在前3ヶ月で20kg増えた体重を元に戻し、
とりあえず二桁まで体重をもっていくということも、
ケアの目的の一つでした。
最初の2ヶ月間は
順調に1ヶ月10kgペースで体重も減っていましが、
3ヶ月目に入ってからは横ばい状態でした。
そんなりおちゃんと、同居している叔母さんといさどんの
3ヶ月面談の様子を今回は紹介したい思います。

いさどん:
りおちゃんの場合、
今のところ何かが問題というよりも、
生活の規律を整えていくことが大切なのですが、
この人はマイペースで、積極的に取り組んでいこう
という意欲がなかなか見られません。
体重についても、
そんなに食が進む方ではないと思うのですが、
その割には体重も落ちていきません。
ただ、無理やり減らしていくというのも問題ですから、
体を動かしながらバランスのいい生活の中で
体重が落ちていくというのが理想です。

小学校の低学年くらいまでの食が
こういった体質に影響します。
しかし、実際にそうだからと言って、
バランスのいい体にならないというわけではありません。

りおちゃんの気持ちとして、
自分を前に押していくというのが
なかなか見られないですね。
だからと言って、
「こうしたらいいよ、ああしたらいいよ」と
まわりの人が伝えても、
この人の中には自分の意志でやっていきたい
といった思いがあります。
もうちょっと積極的に取り組んでいかないと、
これ以上ここにいてもなかなか成果は上がらないです。

当初、体重が20kg減ったことに関しては
何とかなったにしても、
それ以上のこととなると、
よほど本人が自分の生活スタイルなど
色々なことに対して自覚して取り組まないと難しいです、
という話は前回の面談の時にしました。

外で積極的に農作業をやろうとしても、
やはり体力を使う仕事となると、
それなりの体が出来ていないと難しいんですよね。
だから、どうしても軽作業ということになってしまい、
今のところこれ以上の成果は
なかなか望めないという状況です。

とりあえず、4月5日で丸3ヶ月です。
前回、「これからどうするの?」と聞いたら、
「4月5日でここの滞在に区切りをつけて、
半年くらい叔母さんのところにいて、
10月から大阪へ行って友達と一緒に住む。
それまでの半年間は
アルバイトでも見つけて仕事をする」と言っていました。

りおちゃんは幼い時に両親がいなくなり、
小さい頃から孤独だったからなのか、
自分の考えで何でも進めていき、
まわりの考えを聞いてそれに合わせていく
ということがあまりありません。
自分のやりたいこと以外のことはやりたくない
という傾向は見られると思います。

でも、自分のやりたいことをやった結果、
今の状態になっているのですから、
自分がやるにしても自分の健康体を保て
規律ある生活リズムを身につけていくことが必要です。
その意味がりおちゃんには
まだよくわかっていないのかなと感じています。

今後どうしていくのがいいのか、
ご家族の方と一緒に話し合ってみようということで、
今日はお越しいただきました。
前回りおちゃんと話した時には、
「作業でも何でも前向きにやってみようよ」
と声はかけたので、一応はやっているんだよね。

りおちゃん:
午前と午後両方とも
作業に出るようにしています。
実は、あの後一人で考えたり、
ファミリーの人たちと話をしていく中で色々と考えました。
大阪に行くのは変えない。
それは自分で決めたことだし、
友達にももう言ってあるし、
どうしても一緒に住みたいからそれは変えない。
でも、この間いさどんと話をした時に、
「大阪に行くまで半年もあるね」って言われたから、
半年をちょっと削って、
もうちょっとここで皆と一緒に作業をしたいなと思いました。

だから、自分の性格が変わるまでもうちょっとここにいようかな、
と色々な人と話をして思ったんです。

いさどん:
自分で思ったの?

りおちゃん:
はい。

いさどん:
そうやって自分の中から湧き出てこないとね。
ただ言われているだけでは、
ここにいても成果は出ません。
やはり自分で自分に負荷をかけていかないと。
「こうしたらどう?ああしたらどう?」と人から言われても、
自分の中で「そうだね」と思う心があってやるのと、
ただ言われてやっているのでは
成果が全く違います。

今初めて、その話を聞きました。

りおちゃん:
ちなっぴとよく同じ作業になって、
色々話をしてくれて。

いさどん:
ちなっぴも昔は体重が多かったけれど、
ある時からすごいエネルギーで
自分に負荷をかけるようにして、
今はバランスの良い人になりました。
ちなっぴは思い立ったらどこまでもやりきる人です。
りおちゃんは頑固者ですが、
良く言えば自分が思ったらやりきれる人なのだから、
そのくらいの気持ちでやれればいいね。

これから大阪に行って仕事をしていくにしても、
まわりの評価によって自分が表わされていくわけだから。
しっかり規律を持って生きていくということが、
生きる上での大切なポイントです。
そこのところに気づいていかないと。

今、話を聞いてみてどうですか?

叔母さん:
今、「もうちょっとここで頑張ってみたい」
と自分から言ってくれてすごく嬉しかったんです。
もし、ここにいるのが嫌になっているのだったら、
今日にでも連れて帰ろうかと思っていました。
ここにとっても迷惑になるだけでしょうし。

私がここを選んだのは、
りおの体が痩せて
細胞を活性化させていくということもそうなんですが、
ここには色々な人たちがいるので、
若い時に3ヶ月であっても、
そういう貴重な出会いを経験すれば
いずれは役に立ってくれるんじゃないかと思ったからなんです。

農作業は自分がやりたい
と思ったことではないかもしれない。
でも、規則ある生活を身につけるとともに、
自然からも作業からも人からも得られるものを得て、
自分が今いる環境を
積極的に活かしてほしいという思いがあったんですね。

そうは言っても、
本人が気づかないとダメですよね。
本人に気づいてほしいとずっと思っていたのですが、
今のりおの言葉を聞いて、
ようやくそうなってきたのかなと。
今、滞在予定の3ヶ月が終わりに近づいていますが、
今から短くても
そういう信頼のある交流があるといいと思います。

やっぱり、りおは小さい頃から孤独だったんだと思います。
心から安心して信頼出来る関係をまだ持てていないし、
自分をさらけ出していくことをしてこなかったんだと思います。

私たちは、りおが自立するまで
見守って応援していきたい気持ちはあるので、
本人に「ここでもうちょっと学びたい」
という気持ちあるのであれば、
ぜひお願いしたいと思います。
心からそう思っているのであれば
本当に素晴らしいことだと思うし。。。(涙があふれてきます)

いさどん:
この間話した時は、
「このままにしておくと、
洞窟にこもっている熊みたいな生活が変わらないから、
そろそろはっぱをかけないといけないのかな」と思っていました。
その時は人に言われてむっとした感じだったので、
「怒っているの?」と聞いたら、
「怒っていません」と言うのだけれど、
そういうふうに見えたんだよね。

最終的には、自分のことだから
自分のことは自分で出来るようにならないといけません。
ここにいても
いつかは旅立っていく時が来るのだから。
もし、りおちゃんにここで
もうちょっと頑張ってみる気があるのなら、
真剣に取り組んだらいいよね。

親子関係が難しいから、
友達にしか本当のことを言えないという人がいますが、
この人は本当の心を表現する関係を
築いてこなかったように思えます。
自分のことは自分でやっていくということは、
ある意味では強い意志なのかもしれないのですが、
ある意味ではなかなか人の言うことを
採用できないということになります。
言われると壁をつくってしまうようなところがあるのかなと、
このところ特に思っていました。

そういう意味では、
ここでも今までお世話になっていた
叔母さんたちにもそうですけれど、
そういう人にこそ自分の心を開き、
柔らかい人間関係をつくっていくことが大切です。
人間関係には縁の切れる人間関係と、
絶対縁の切れない人間関係があります。
そういうものを大事にしていかないといけません。

叔母さん:
この子は反発すると結構きついんですけれど、
相手がいさどんなら大丈夫ですね。
いさどん自身がむかつくこともないだろうと
安心していたんです(笑)

いさどん:
こちらには何もありませんね(笑)。
ただ、他の人であれば
自分の感情を露わにする人もいますが、
実はそのくらい本当を出してもいいんです。
りおちゃんは自分という中に入ってしまっています。
本当の気持ちをもっと出すといいんです。

僕らとしては何があっても、
この人が「良い人生を生きてよかったね」
と思えるような人生を
これから歩んでくれればそれでいいんです。
それが目的ですから。

叔母さん:
本当にそうですよね。

いさどん:
自分にとっては良いことであっても、
相手との関係においては
自分にとって良いことが
相手にとっても良いこととは限りません。
そうすると、そこでお互いに
良くない人間関係が出来ます。
一人でいると問題がないようだけれど、
いつかは家族を持ったり
大事な人間関係をつくっていかないと
いけない時が来ます。
そういう意味では、
自分の心を正直に外に表現していくことが大切です。

それから、
バランスの悪い自分の心の持ち方にも気づき、
改められるところは改めていくという作業をしていかないと、
そのつけは必ず自分に戻ってきます。

それにしても、
自分の中から意欲が湧いてきて本当に良かったですね。
ずっとマイペースだったから。

叔母さん:
自分からそういう思いが湧くのは初めてです。
りおも望んでここに来たわけではないけれど、
やっと自分からここを選んで、
ここの良い所を吸収しようとしてくれているかなと思うと
本当に嬉しくて。。。(涙がとまりません)

いさどん:
じゃあ、これから本気になってやってみるか?

りおちゃん:
はい。

いさどん:
そうしたら、
長くここにいたって成果が上がるものでもないから、
1ヶ月、思い切り
自分の気持ちも体も絞ってみるということでやってみよう!
この1ヶ月で変身するぞ!