ケア卒業生けいこちゃんのインタビュー

去年の9月14日から1ヶ月のケア滞在、
その後1ヶ月半の生活体験をしていたけいこちゃんが、
先週末木の花に帰ってきました。
けいこちゃんがうつ病になった経緯から、
滞在の振り返り、そして近況についてのインタビューを、
皆さんともシェアしたいと思います。

ようこ:
まずは、けいこちゃんがうつ病になった経緯から話してもらおうかな?

けいこちゃん:
もともとうつ病になりやすい気質があったと思うんですが、
うつ病と診断されたのは10年前のことですね。
ある日突然、自律神経がおかしくなって動けなくなってしまいました。
今思うと、元夫がつくった借金を返すために、
ものすごく忙しい日々を1年間過ごしたことがきっかけだったと思います。
その過労とストレスでうつ病になったんだと思います。

うつ病が発症した2年後に、
自殺念慮が強くなり2ヶ月間入院し、
この時から抗うつ剤や精神安定剤を飲むようになりました。

ようこ:
入院中の2ヶ月はどういう毎日を過ごしていたの?

けいこちゃん:
薬を飲んでほとんど寝ている状態でした。
最初の1ヶ月は個室だったのですが、
あとの1ヶ月は相部屋になり
他の精神患者さんと仲良くなって昼間に散歩したり、
一緒に行動することが多くなりました。

ようこ:
自殺念慮が強くなって入院したということだけれども、
入院中の心の状態はどうだったの?

けいこちゃん:
多分薬のせいで、ほとんど考えられなかったですね。
病院側が考えさせないというか。
でも、退院したら前以上に自殺念慮が強くなり、
状態が悪化していました。
退院することがすごく恐ろしくて、
「社会に馴染めるだろうか。
ちゃんとやっていけるだろうか」とすごく不安で、
そういう思いを拭い切れないまま退院してしまい、
またひたすら寝込んでしまいました。

ようこ:
退院してから木の花に来るまでの8年間は、
ひたすら寝ている毎日だったの?

けいこちゃん:
長いこと寝込んだ後に、
「働かなくちゃ」という焦りから少し気合いが入り、
ちょっと就職活動をして働いてみる。
でも、張りきりすぎて続かなくてまたやめる。
そういう繰り返しが何度かありました。
そしてその繰り返しから抜け出そうと
完全に仕事をしない期間を設けたら、
そのまま2年くらい引きこもってしまいました。

ようこ:
ここに来るまでは、薬を飲む以外に
うつ病に対して何か治療を受けたことはあるの?

けいこちゃん:
カウンセリングも受けたし、1年半前には
「内観療法」という民間でやっている治療法も1週間受けました。
一日中、一人の人、例えば母親なら母親のことをずっと考えて、
今まで母親にしてもらったことや、してあげたことを
ひたすら思い出すという作業をしました。

ようこ:
それでうつ病に効果はあったの?

けいこちゃん:
内観道場にいた1週間の間はあったと思います。
ありがたい、頑張らなきゃという気持ちになれて。
でも内観する、自分の心と向き合う、
過去を思い出すという作業がとにかく辛くて、
持続出来ませんでした。
同時に断薬も勧められて取り組んでいましたが、
副作用もひどく、1ヶ月後にはまた薬を飲むようになりました。

ようこ:
薬を飲むことでは、どういう効果があるの?

けいこちゃん:
副作用として、心と体と頭が
別々の方向に行っているという分離感があり、
頭は痛いし、ぼーっとするから集中出来ないけれど、
薬を飲まないよりはずっといい。
薬が切れてきたなと思うと、怖くて不安で、
いてもたってもいられなくなって飲んでいたのを覚えています。

薬には筋肉の弛緩作用があるので、リラックス効果はあります。
その反面、体がだるくなったりこわばったりするけれど、
薬がないと緊張したりパニックになったり、
ものすごく警戒するという症状が出ていました。

ようこ:
カウンセリングはどうだった?

けいこちゃん:
保健士さんや心理士さんからカウンセリングを受け、
時々お話を聞いてもらったりしていました。
話を聞いてもらって気は楽になるのだけれど、
アドバイスはあまりもらえないので、
問題の解決にはならなかったですね。
ただ、話しづらいことでも話せる人がいるという安心感はありました。

ようこ:
薬を8年間服用し、
内観療法やカウンセリングを受けながらも、
うつ病が良くならなかったということで、
ここの自然療法プログラムを受けることになったんだよね。
ここのことはどうやって知ったの?

けいこちゃん
去年の2月頃、インターネットで
「うつ病」、「自然療法」で検索したら、ここのことを知りました。
薬には限界を感じていたので自然療法に興味がありましたし、
有機農業にも関心があったので、
自分が考えていることとここは近いなと思っていました。

でも、私は疑い深い性格なので、
ここが発信している情報からではなく、
外部の色々な人の訪問体験記を読んで
ここについて判断したいと思ったのだけれど、
どうも今一つわからない。
だから、これは自分で見るしかないと思って、
9月14日にここを訪れることにしました。

ようこ:
2月頃ここのことを知ってから9月に訪れるまで
半年くらいの期間があったのだけれど、この間は何かあったの?

けいこちゃん:
実は、8月の末に東京で
最新医療の治療を受けに行こうとしたんです。
強い電磁波を頭に流し、無理やり血流を良くするという治療法で、
電気ショックが進化したようなものです。
それを受けにいこうとものすごく気合いを入れて東京に行ったのですが、
主治医の先生が診察中にあくびをしたんですね。
それで、私はすっかりやる気を失ってしまったんです。
そこで、今まで行こうか迷っていた
木の花に行くしかないということで訪問に至りました。

ようこ:
その電磁波療法ってちなみにいくらぐらいするの?

けいこちゃん:
トータルで2ヶ月くらい入院して50万くらいします。

ようこ:
それを1回受けると、うつ病が治ると言われているの?

けいこちゃん:
それが効く人でも60%で、しかも60%のうち、
再発するのがほとんどだそうです。
それを主治医さんから聞いたら、すっかり嫌になってしまいました。

それで、「これが最後かな」という思いで木の花に来たんです。
来たのはいいけれど、本当に私は疑い深い性格なので、
「私は絶対ここにはだまされない」と思っていたのを覚えています。

ただ、自分がこの病気になったのは、
何となく自分が呼びこんだものだとは漠然と思っていました。
自分の元々の性格、気質がこういう病気となって現れたんだと。
それをいさどんに、
「自分の中にある種が原因ですね」と明確に言われたことで、
ここに賭けてみようという気になりました。

今までのカウンセラーさんには、
いさどんのように何かを指摘されたことはなく、
「それであなたはどう思ったんですか?」とか、
「それであなたはどうしたんですか?」と言われるだけでした。
私がアドバイスを求めれば、
「ゆっくりしたらいいんじゃない?」とか、
「あまり気を揉まないようにね」と当たり障りのないアドバイスはしてくれましたが、
根本の解決策はもらえませんでした。

だから、「いさどんは今までのカウンセラーさんとは違うぞ、何ものだ?」と思いました。

ようこ:
実際ケアをスタートしてみてどうだった?

けいこちゃん:
来たばかりの頃は、びくびくおどおど、
ぐずぐずめそめそしているような状態で、
自分も他人も信じられないし、
自分も消えてしまいたい、
皆も消えてしまえばいいと思っていました。
とにかく辛かったというのを覚えています。

家にいる時は寝てばかりの生活だったので筋肉も弱っていたし、
座っているのも辛い状態で、
なにしろ普通のことがまともに出来ませんでした。
大勢の人の中で色々なものを見たり聞いたりするのも辛く、
頭が一杯になって混乱するので、
しばらくの間は耳栓をしながら食事したり、大人会議に参加していました。

ようこ:
大勢の人の中にいるのがストレスと言いながらも、
けいこちゃんが部屋にこもっていたという印象はなかった気がするけれど。

けいこちゃん:
ここに来るまでは昼夜逆転した生活を送っていたから、
それを直すきっかけにしたいと思っていました。
とりあえずお昼頃までには起きて夜に寝る。
夜まで寝ないようにするために、仕方なく皆の中にいたんです。
ここに来るまでは夕方起き出して夜に寝て、
1日15時間くらい寝ていましたから。

だから最初は、午前の10時頃には起きて
食事のお手伝い等出来ることをするようにしていました。
10日後にはここでの生活にも慣れてきたので、
朝起きて農作業にも出られるようになりました
こうして徐々に規則的な生活リズムが出来てくるようになり、
この頃から減薬にも取り組み始めました。

ようこ:
そしていさどんから、
「減薬から断薬を目標に、自分を信じてやっていこう」という話もあって、
2週間後には断薬したんだよね。

けいこちゃん:
はい。実は私より10日遅れて、
あっくんと快児くんがケアをスタートしたんですよね。
彼らは来てすぐに断薬して、
辛そうながらも不眠ながらも、作業には出ていた。
その姿を見て、「私もやめなきゃ」と思ったんです。
「後から来たのに先を越された!
私は何をやっているんだろう」と思えたのは、本当にありがたかったですね。

ようこ:
けいこちゃんは断薬しながらも、
引き続き規則正しい生活を送り1日中農作業に出ていたよね。

けいこちゃん:
すごく楽な作業にしてもらっていたんです。
断薬中は、体がこわばって、
眼を開けていられないような症状が出たり、
心と頭と体の分離感がありました。
2日目頃そのピークが来て、
ピークを越えたな、嬉しいなと思っているうちに、
いつの間にか1週間後には症状がなくなっていたという感じです。

だんだんすごくいい感じでここに巻き込まれていって、
もっともっとここのことを知っていきたいとか、
色々なことを聞いていきたいという気持ちが出てきて、
自然に耳栓も外れるようになりました。
自分の中では、「なんか変わったな、不思議だな」というふうに思っていました。
ここは善意の中で皆が暮らしている、
すごく信頼できると思うようになり、
どんどん安心して自分の身も心も委ねていけるようになりました。

ここにいて、自分の説明出来ないもやもやとした気持ちを持っていると、
自然と他の人がタイムリーにそれをわかりやすく伝えてくれて、
そうやって自分の心を理解していくことができました。
日々作業をしながら、自分で心の癖に気づいたり、
皆からのアドバイスで自分に問題のあるところを直していきながら、
心身ともに健康になっていったように思います。

ようこ:
その後も順調にケア期間を過ごし、
見事1ヶ月でケアを卒業することになりました。
その後も「自分の心の癖をどんどん見つけていきたい」ということで、
1ヶ月半の生活体験をしたよね。
それはいつ頃から考えていたの?

けいこちゃん:
ケアをスタートしてから1ヶ月になろうとしている時に、
「そろそろいさどんと話をすることになるだろう。
もしかしたら卒業かもしれない」と思っていました。
でも、自分としてはこのまま社会に出るのは中途半端な気がしていました。
外で働くことに対する自信のなさや、
自分には先案じする癖や心配性なところ、焦る癖があるので、
そういった心の癖をしっかりコントロールできる自分になりたいと思ったんです。

病気はもう治ったし、また自分が病気に戻ることはないだろう。
あとは、自分に病気をもたらした心の癖を理解して、
自己コントロールできるようにマスターできたらいいなと思い、
引き続き滞在することにしました。

ようこ:
けいこちゃんのうつ病が治った一番の決め手は何だったと思う?
ここに来る前に飲んでいた薬でも、
内観療法でもカウンセリングでも治らなかったわけだよね。
ここの何がうつ病を完治させたのかな?

けいこちゃん:
安心感ですね。
本当に疑い深い私でも、ここは疑う必要がない環境なんです。
最初は、日々の生活の中でも大人会議でも、
皆がお互いに対して色々な指摘をしているのを聞き、
「なんて厳しいことを言うんだろう。
そんなに言わなくてもいいんじゃないの」と思っていました。
でも、皆がものすごい時間とエネルギーをかけて
相手に伝えているのを目の当たりにした時に、
皆の中にある善意がわかってきたんです。
「善意なんだ、安心していいんだ」と思えるようになったのが、大きかったですね。

あとは、自分を見ていくということもポイントだったと思います。
大人会議で皆が自分の心をシェアしているのを見て、
「これは自分にもあるな」と自分を重ねて振り返ったり、
「自分だったらどうだろう?」と思っていくうちに、
自分の心について客観的に見られるようになり
自分の頭の中でぐるぐる考えを巡らせないですむようになりました。

病気だった頃は、
自分には色々な癖があることを頭ではわかっていたんですが、
自分のことを否定的にしか見られず
「わかっちゃいるけどやめられない」という感じでした。
しかし、ここに来てからは、
自分を受け入れることですごく楽になれることを知り、
「自分を見つければ変われるんだ」と思えるようになりました。

ようこ:
例えば、どういう自分を見つけたの?

けいこちゃん:
取り繕っている自分や
人に評価されたい、認められたいという自分、
目立ちたがり屋な自分などですね。
心配症な自分やすぐ不安に感じる自分については、
「これは大きな癖だな、ちょっと解決が難しいね、けいこちゃん」と
肩をたたいてあげたくなるような感じですが(笑)。

日々作業をしながら、
自分の心の気づきをまわりの人とシェア出来たり、
アドバイスをもらえたことも大きかったですね。
「気がついて良かったね」という皆からの言葉も励みになりましたし、
皆から言ってもらったことはとりあえず何でも受けとめてみようと思っていました。

「安心感」と「自分を見ていくこと」、そして「皆からの言葉がけ」の3つが、
自分のうつ病が良くなったポイントだと思っています。
皆の言葉というのは、直接自分に対するものも、
皆が他の人に対して伝えるものも、その両方が役に立ちました。

自分の癖が出た時に、「あっ、出たな」と
自分ですぐ気づけるようになったのは大きな収穫です。
出る前に気づくようになるのは、まだ難しいですね。
でも、癖が出てから自分が気づくまでの時間は確実に短くなってきています。

ようこ:
「自分の心を見ていくのが楽しくなってきた」と言うけいこちゃんは、
ここを卒業してからも確実に良い方に向かっているね。
けいこちゃんはケアを卒業してからの4ヶ月半、
ご両親と一緒に暮らしているんだよね。ご両親の反応はどう?

けいこちゃん:
「すごく話しやすくなった。
ご飯を一緒に食べて、片づけも一緒にやって、
その後一緒に同じ部屋でテレビを見ているのが信じられない!」と両親が驚いています。
「笑顔が出るようになってすごく嬉しい」と母親が泣いていたこともありました。
うつ病が発症してからの10年くらいはそういうことがありませんでしたから。

以前は私が過剰に反応するので、
両親ともすごく私に気を遣っていました。
当時は、自分が過剰反応をしているという意識はなかったのですが、
向こうが気を遣っているのはわかっていて、
「ほっといてくれればいいのに。
とにかく私はいないものと思ってほしい」と思っていました。

でも今は、すごく穏やかに皆で暮らしています。
規則正しく暮らせていますし、
半年近く薬を飲まなくてもすごく良い状態を保てています。
ここで沢山のことを学ばせてもらい、
親が死ぬ前に良くなって本当に良かったと、とてもありがたく思っています。

ようこ:
11月30日にここを出て、
12月10日頃にはお兄さんの経営しているお店でアルバイトを始めたんだよね。

けいこちゃん:
実はここを出る前に、将来に対する不安が出てきていたんです。
でも、「不安はあるけれど、どうなるか楽しみにしていこう」と
いう気持ちになれたのは、ここのおかげだと思っています。
全て自分が種を播いているのだから、
良いイメージを持てば良いふうに返ってくる、
自分を信じることが大切ということをここで学びましたから。

働き始めてみて、お兄ちゃんは
私がすぐに休みたい、早退したいと言い出すのではないかと懸念していましたが、
「今のところ一度もそういうことがないからびっくりしている」と言っています。

最初は自分の癖で必要以上に張り切りすぎてしまいましたが、
最近は慣れてきて良い感じにやれるようになりました。
これからは、もう少し働く時間も増やしていけたらいいなと思っています。

ようこ:
けいこちゃんは10年近くうつ病を患っていたんだよね。
けいこちゃんがうつ病になったことで学んだことは何かな?

けいこちゃん:
誰でも色々な癖を持っていると思うのだけれど、
私は現象として病気というわかりやすいものをもらいました。
そういうわかりやすいものをもらって良かったなと思っています。
これが病気として現れず、
自分の心の種に気がつかないで生きていたら、
もっと大変なことになっていたかもしれない。
ここで気づけて、修正出来て本当に良かったと思っています。

ようこ:
そうだよね。その心の種が病気として出るか、
人間関係のトラブルとして出るか、交通事故として出るか、
金銭的な問題として出るかの違いだけだから。
けいこちゃんの場合は病気として現れ、自分の学びとなったんだね。

けいこちゃん:
その渦中にいる時はもちろん、ものすごく苦しかったんですが、
こうやって治ってしまえば本当に良かったと思います。
人間関係でも何でも、
自分の本質、心の中にある種を
自分に見せてくれるものなんだなと今は確信しています。

だから、もしこれから具合が悪くなったとしても、
「自分の心を見る」という処方箋があるので、
ある意味安心して具合が悪くなれるような気がしています(笑)。
「心を見る」というのは何にでも効く、困った時の処方箋!と思っています。

ただ、自分一人で自分の心を見るのには限界があるし、
人からいただいた言葉の方が、
「そうか、じゃあすぐやってみよう!」という気にもなれます。
だから、お休みの時にここに帰ってきてこことつながりながら、
心の学びを実践していこうと思っています。

実は、ここを出てからの方が木の花の存在を強く感じています。
「木の花的にはこれをどうするだろう?」ということをよく考えます。
いさどんや皆からいただいた言葉を思い出し、
ブログや大人会議の議事録をヒントにしながら、
日々心の学びを実践しています。

ようこ:
今、うつ病の人が眼の前にいたとして、
けいこちゃんならどういうアドバイスをする?

けいこちゃん:
「自分を見ていったら?」と言います。
でも、うつ病の人はある程度自分の悪いところはわかっているんですよね。
それに捉われて自分を否定してしまい、
どんどんネガティブスパイラルに入っていき、
しまいには自殺してしまうという状態なんだと思います。
そう考えると、自分を見ていくというのは酷かもしれないですよね。

ようこ:
自分を見ていく見方が重要なポイントだよね。
自分を否定的に見るのではなく、逆に楽観的に見すぎるのでもなく、
客観的に見ることができればいいんだよね。
けいこちゃんの場合は、ここでケア滞在をすることによって、
客観的に自分を見ていくことをマスターすることが出来た。
ここで滞在するということは、その一つの手段だと思う。

最後に。10年前にうつ病の真っ只中にいた頃の自分に何て言ってあげたい?

けいこちゃん:
ここまで行き詰まっちゃったのね(笑)。
そうなる前に気がつけば良かったね。
でも気づけなかったからこそ、木の花と出会って
心を学ぶことが出来たのは本当に良かったと思っています。
うつ病でも社会のどんな問題事でも、
皆が木の花のような暮らしをしたら、簡単に解決すると思います。
すごくシンプルに、皆がつながり、調和して生きていければ。

ようこ:
つながるからこそ、安心できて、
疑う心や不安な心、ネガティブな感情が消えていくんだものね。

けいこちゃん:
つながるから、自分のことも他人のことも同じように思えるんだし、
そのことに皆が気づけばいいと思います。
私はここに来てそのことに気づくことが出来たので、
これからそういった心をまわりの人にも伝えていけたらいいと思っています。
今日は色々と話せて良かったです。
またすぐに帰ってきます!


16歳のお誕生日に3人の旅立ち

3月19日の夜、
3ヶ月の生活体験を終了した
ひーちゃん&みーちゃんと、
2ヶ月の農業体験を終えたカトケンの
いってらっしゃいコンサートが開かれました。
その2日後の21日は
木の花ファミリー16回目の誕生日ということもあって、
感慨深いコンサートになりました。
今回のブログでは、
3人の旅立ちの言葉と
いさどんからの贈る言葉を紹介したいと思います。

ひーちゃん:
僕たちが暮らす石川県の「いちの谷村」は、
雪深く孤立した集落なので
僕とみーちゃんでは越冬できないだろうと思い、
冬の間ここで生活体験をすることにしました。
正直ここに来る前は、
寝て食べられるところがあればいい
としか思っていなくて、
木の花の精神性を最初から
求めて来たわけではありませんでした。

とは言っても、いちの谷村で
エコビレッジを始めるということで、
その勉強はしたい。
農業についても自分たちは素人なので学びたいと、
どちらかというと、心の面よりも
現実に生活するために必要なことや
今後自分がしたいことを学ぶために来ました。
まあ、軽い気持ちだったわけです。

ただ、そうは言っても、
11月の始めに初めて1泊させてもらった時に、
「なんか、ここいいな、また来たい」
と思ったのは確かです。

12月に来てみて、最初の1ヶ月は
皆さんとの生活に慣れるのに一生懸命で、
がむしゃらに何も考えずにやってきました。
そして、1ヶ月経った年明けくらいから、
ここの心磨きというものを
意識するようになりました。
自分の正直を全部出し、
全てを共有して一つの家族として
やっていくということが、
日々の暮らしの中で
僕の感覚としてわかってきました。

そうすると、素晴らしいところだなと思う反面、
今までの自分の在り方とのギャップに辛くなり、
1月の後半から2月の始めは、
「3ヶ月まであと何日かな?」と
指折り数えているようなところも正直ありました。

でもそういった時期が過ぎ、
淡々と日々の生活をしていく中で、
皆さんの愛や場の空気、場の力によって、
ここにいるのが当たり前で
自然という感覚になってきました。

今はいちの谷村に帰るんだ
という思いもありますが、
ここも僕とみーちゃんのホームという感覚です。
「いちの谷村に帰ります、いってきます」と言いながら、
「またすぐここに帰ってきます」という思いでいます。

ここでの3ヶ月というのは、
今までの人生の中で一番濃密な時間でした。
こんな素晴らしい体験が出来て、
本当にありがたいなと思います。
いちの谷村に行ってどうなるかわかりませんが、
やるだけやってみようという思いでいます。
皆さんも遊びに来て下さい。
どうもありがとうございました。

みーちゃん:
ひーちゃんが言っていたように、
私もここに来るまでは、
エコビレッジというものが
どんなものなのか全然わかりませんでした。
でも、ここに来てみて
皆さんと生活しているうちに、
自然と自分の中に
染みついてきたように感じています。

いちの谷村に帰ったら、
ここのように心のある
村づくりをしたいと思っています。
そのためには皆さんの助けが必要ですし、
私自身も心を磨いていきたいので、
厳しい眼で応援して下さい。

また、いつでも遊びに来たいので、
その時は「お帰り」と言って下さい!
いちの谷村にも皆さん帰ってきてもらったらいいです。
その時には、「お帰り」と言いますので、
これからもよろしくお願いします。
ありがとうございます。

カトケン:
僕がここに来た時には、
もう自分を変えないとどうしようもない
という状況でした。
すがるような思いでここに来ました。

今眼をつぶると、
色々な人の言葉が聞こえてくるような感じです。
その時の自分にとって旬な言葉が
常に自分に吸収されているようで、
みんなの愛が伝わってきているな
という実感がありました。

ここに来るまでは、
「この社会は何かおかしいな、
何か変だな、何か足りないな」
ってずっと思っていました。
自分の中では心や愛が大切だと
ずっと思い続けていました。
ここに来てそれが嘘ではなかった
ということがわかったので、
すごく良かったです。
本当にありがとうございました。

いさどん:
僕も今カトケンが言ったように、
「この世の中は何か変だ、
今の人の在り様は変だ」
というふうに思っていました。
この世界には色々な生き物がいますが、
人間というのはそういった中で
最も性の悪いものではないか
と僕は思っていました。

自分たちが何かを得ようとする結果、
まわりのものや大切な家族、
自分すら壊してしまう。
自分の領分というものをわきまえず、
わがままや傲慢というものの
極みだろうと思っていました。

ところが、心を勉強していきますと、
問題事はそんなに悪いことではない
と思うようになりました。
病気でも何でも問題事をもらうと、
そこから勉強することが出来ます。
自分の中にその原因の種があることに気づき、
反省し、それを改めることが出来ます。

人間以外のものはそういうことが出来ません。
そういう意味では人間は尊いものです。
そうやって反省し改め、
学んで成長していくのが人間の特徴です。
学んで成長していくために
欲の心も与えられているんだと思うと、
人間であることは悪いことではありません。

僕はもう30年近く、
世の中の人たちの相談を受けてきました。
成功している人、
やることが何でも上手くいく人はいいのですが、
生きていると、
なかなかそうばかりはいかないものです。
何をやっても行き詰まっていく人、
不器用で自分のやっていることが
自分の禍になっていく人たちに、
なぜそうなっていくのか
ということを伝えてきました。

その結果、成功してきた人たちだけが
良い人生を生きているわけではない
ということに気づきました。
成功してきた人たちは、
今の自分の状態に問題点を感じないので
自分の心を改めるということをしません。
そして、もっと成功したい、
もっと物が欲しい、沢山あったらいい
という心になります。

そうすると、自由で
好き勝手に生きているようですが、
実はお金や物に縛られ、
不自由で狭い世界に生きていることになるのです。

私たちがこういう生活を始めてから、
3月21日で16回目の誕生日を迎えます。
志を持ってここを始めた人たちは、
これから何が起こるのかわかりませんでしたが、
この生き方は世の中にとって大切なことだと信じ、
それに人生を賭け、ここまで歩んできました。

最近は、ここのことを学びに
色々な人たちが訪れます。
でも相変わらず、
ここを訪れるほとんどの人たちが、
自分の考えとここの生き方が合うかどうか、
ここを自分が認められるか認められないか
といった観点から
私たちを見ているように思います。

しかし私たちは、
自分がこの生き方を好きか嫌いか、
認められるか認められないかということよりも、
自分の心が受け入れにくいことでも
大切なことだという想いで歩んできました。
自分たちのためというよりも、
世の中のために大切だからということで、
こういった生き方をしてきたのです。

今のように世の中の仕組みが
色々と行き詰まってくると、
ここへ学びに来る人たちが多くなってきます。
特に、体や心の病気を持っている人たちが
学びに来るようになりました。

通常、いってらっしゃいコンサートは、
体や心の病気を克服し
社会に戻っていくケア卒業生のために
開かれるものです。
しかし今日のコンサートは、
心やこういった生き方を学ぶために
長期間滞在をしていた
3人の旅立ちを祝うコンサートです。
これは16年間で初めてのケースです。

ひーちゃんは、
どことなく心もとなく
半分ケアみたいだと思っていたのですが、
今日の話を聞いていたら、
物事を道理で掴み、
自分の道に落とせる人になってきました。
成長したと思いました。

みーちゃんは、
外観は女性だけれど、
心は男性っぽくて拘りがあり、
決めつけるところがあると思っていましたが、
最近は、相手の心をちゃんと見て
自分の心を引いたり押したり
調整が出来る人になってきました。
大変バランスが良い人に成長したと思いました。

カトケンは、
学校の先生になりたいという割には、
先生になるどころか、
その前に社会で通用するような
しっかりした考えを持っていない
と思っていましたが、
今の話を聞いていたら、
この人の中に大事というのが
しっかり落ちてきたと思いました。
その大事が落ちた人は、
人の見本になれると思います。

そうやって一人一人が、
自分の心の中におみやげを持って
ここを卒業していくことが出来ると思うと、
新しい時代が訪れたと思っています。
ここを旅立って社会で
それぞれの道を歩んでいく
ということでもあるのですが、
皆が兄弟であり家族であり、
どこへ行っても
自分の家があるような
社会をつくりたいと思っています。

一般の社会でそんなことを
考えている人は少ないのですが、
どこへ行っても自分の家が
あるような世界が出来たら、
皆が笑って暮らせます。
今のようにあくせくしなくても、
もっと少ないお金や物で
幸せに生きられるようになります。
そうしたら、国も健康になるだろうし、
地球も喜ぶだろうと思っています。

そういった心を学び
巣立っていくということは、
まさしく木の花のメンバーが
世の中に散っていくということだと思います。
こういったことを昔、
皆と話し合いました。

「私たちはここで皆と仲良く
生涯を暮らすばかりではないよね。
この心が大切ならば、
いつでも役割として
日本中そして世界中へでも広まって、
この心を伝えられる。
ここの家族から離れたとしても、
同じように新しい
素晴らしい家族が出来ていく。
それならば、
どこに行ったっていいんじゃないの?
地球が家なんだから。」

この心が世の中に旅立っていき、
その結果広がっていくという
スタートの年なのかなということをふと感じて、
今日は記念すべき日だと思いました。

一人一人が
自分にふさわしい花を咲かせ、
それがつながり、
世の中に沢山の花が咲き誇っていく。
これから木の花、梅や桜、桃が咲く季節になりますが、
私たちも皆で美しい“個の花”を咲かせていきましょう。
今日はありがとうございました。


ちよちゃんの心の報告・前編

3月2日から有機農業ヘルパーとして
滞在していたちよちゃんですが、
今は農業のお手伝いよりも
自分の心を立て直す方が大切だと気づき、
ケア滞在に切り替えることになりました。
心身共に健全になろうと
一生懸命取り組んでいるちよちゃんは、
ほぼ毎日のように大人会議で
自分の心の動きを報告してくれています。
今回のブログでは、
ちよちゃんの報告・前編を
皆さんとシェアしたいと思います。

3月5日
昨日、いさどんと面接をして
今日からケアをスタートすることになりました。
私は今まで適応障害と診断されたり、
躁鬱だと思っていたのですが、
いさどんから、「病気じゃなく、
心のボタンの掛け違いだから
薬を飲む必要はないよ」と言われ、
それならやめようと思い、
薬を預かってもらうことにしました。

いさどんから自分の心の癖を
見つめるようにアドバイスされたので、
早速今日きくらげの作業をしながら
自分の心を見つめてみました。
病気に逃げる癖、雑なところ、
わからないのにやる癖、
限界までやるのに心配症、
すぐ諦める、どうしたらいいのか迷う癖など、
いろいろ出てきました。

今までは筋道の通る生き方をしてこなかったから、
人間関係が上手くいっていなかったことにも気づきました。
これからは、小さなことでも
皆の意見を聞く耳を持っていきたいと思います。

いさどん:
今までこの人は
一生懸命やるのだけれど見当違いで、
エネルギーが報われないがために、
辛く生きてきました。
一生懸命はいいのだけれど、
見当違いだと元も子もないから、
もうちょっと生き方の精度を上げていきたいね、
自分を知るということが大切と
昨日の面接で伝えました。
早速真面目に取り組んでくれて、
一生懸命変わっていこうとする心は
とても良いと思います。

今まで一生懸命でも
的を得ていなかったということは、
自分に優しくなかったということです。
自分のためになる生き方をするということは、
人のためにもなるということです。
ケアをスタートしてたった一日ですが、
まずは順調だと思います。

3月6日
作業中、飽きてきたので
散歩しようかどうか一瞬考えましたが、
今ここで散歩に行ったら
今までと同じだと思って、
草取りを続けました。
続けていくと細かい草を
黙々と取ることが出来たので、
良く頑張ったと自分をほめることが出来たし、
達成感も湧きました。

畑作業を一緒にしていた皆さんに、
以前私が自己啓発プログラムを買ったことや、
元主人との出来事を話したら、
「ちよちゃん、愛されているね」と言ってもらいました。
自分以外の目線から
元主人のことについて考えられたし、
自分の心を話せたので心が楽になりました。
今までは、やってしまった自分を責めていたんですが、
それが笑いに変わっていったので進歩したなと思いました。

皆に色々と言ってもらって皆から愛されていると感じ、
今日も沢山幸せです。
「本気で変わろうという気持ちがあれば変われるよ」
というアドバイスに励まされ、
勇気が持てました。
ありがとうございます。

3月7日
作業中疲れてきた時に、
「休んだ方がいいですか?」といさどんに聞いたら、
「また楽な方へ行こうとしている。
現実をしっかり生きなさい」と言われたことで、
今に意識を向けて感謝して生きようと思いました。

畑作業をしながら、
「雑に扱う癖があるから
丁寧にやることを心がけるといいよ」と
以前いさどんに言われたことを思い出したら、
注意して物事を進めている自分に気づきました。
ものを慎重にしっかりと捉えることを
心がけていきたいです。

3月8日
本当は昨日報告しようと思っていたのですが、
今日報告することにして
良かったなと思っています。
というのも、昨日は
良い気づきがいっぱいあってありがとうとか、
幸せだなと思っていたから、
自分は上手くいっているんだと思っていました。

でも、今日ひろみちゃんから、
「前向きに考えることと
楽観的になることは違うよね。
だから、人の意見を聞く時は
しっかりと受け取らないとね」と言われました。
その時に、「昨日ではなく、
今日発表することになったのは
このことだったんだ!」と思いました。

午前中、ハウスのゴミ拾い作業をする前は、
細かい作業で大変だなと思っていました。
でもやってみると、
だんだんハウスが綺麗になってきて、
自分の乱れていた心もこうやって
少しずつ良くなっているんだと思うようになり、
楽しくなってきました。
作業しながら歌っているひろみちゃんの姿にも癒され、
明るく頑張ろうと思いました。

ここに来る前は一日中
寝ていることが多かったのですが、
今日の午後、疲れて2時から3時まで寝てしまった時に
「1時間も寝てしまった!」という意識に
変わっていることに気づきました。
気をつけたら変われるんだと思って、
皆さんのお手伝いを
もうちょっと増やしていこうと思いました。

いさどん:
かっこ悪いところを出して
良い話というのは一番いいですね。

3月15日
1週間自分の心を見つめていたら、
不安や恐怖、
受け入れられない自分、
壊れていく自分、
もやもやが晴れない自分、
そのままでいいのかなと思う自分など、
自分の嫌なところが沢山出てきました。
電話でお父さんとお母さんと妹の声を聞いたら、
家に帰りたくなって、
すごく行き詰ってしまいました。

でも今日、離婚した主人に
今の自分を見せたらどうだろう?と思いました。
「もう帰った方がいいんじゃないか」と
思っている自分では、
幸せになるために離婚したのに、
何のために離婚したのかわからないなと思って、
やっぱりしゃきっとしようと思いました。

いつもぎりぎりまで寝ていたいという気持ちから、
もうちょっと早く起きて何かしてみよう、
1時間早く起きて散歩してみよう
という気持ちに変わりました。
今日一日明るく過ごせるように、
と思って起きることが出来ました。

この1週間、
自分が落ち込んでいて辛かったのですが、
今日その壁を壊すことが出来たのだと思います。
今までは恐れや不安で
「出来ない」という壁をつくっていたのですが、
それを壊して何でもやってみようと
思えるようになりました。

いさどんに、「私はこれから
ミラクルを信じようと思います」と報告したら、
「そうか、やっとわかったね」とほめて下さいました。
「ミラクル、神秘、神様の秘密は毎日訪れる。
それを感じるか、感じないかで
人生は豊かになる」と教えて下さいました。
自分はこれからミラクルを起こしていくんだ、
ということを真っ直ぐ信じていこうと思います。

いさどん:
ミラクルというのは、
自分の概念、枠を超えたものに
出会った時に起きるものです。
自分の考えを手放し、
いただく心になっていると、
当たり前にミラクルが起きてきます。

自分の状態が見えてきても
落ち込まなくていい。
良い自分でありたいということに拘っていると、
自分の良くない部分が
見えてくると落ち込みますが、
見えてきてよかったと思うことも出来ます。
これから、自分の色々なところが見えてくるのだから、
その度に落ち込んでいては
立ち直るのに時間がかかります。
自分の中にあるものが見えてくるだけだから、
それをしっかりと見るところからスタートです。

3月16日
今日は土ふるいの作業をしている時に、
カトケンから「もっと力を抜いて
やるといいよ」と言われたので、
今日は力を抜くことを意識してみました。
今まで私はドロドロした環境にいて、
ドロドロしている自分をすごく汚く感じ、
とても人に見せたくない、
人前に出たくないと強く思っていました。

でも、「何でも正直に出すといいよ」と
一緒に作業をしていた人から言われたので、
これからはドロドロしている自分でも
大人会議で報告しようと思っています。

もう一つの気づきは
いつも自分のことばかり
考えていることが多いから、
他人のことも考えられるようになりたいと思いました。

いさどん:
ドロドロしている自分に気づき、
報告したり、それを取っていくということは
いいことだと思います。
自分のことばかりというのは、
損得で物を考えているということです。
自分の損得だけを考えるということは、
偏った見方になるし、
結局損ばかりということにもなります。
相手のことも考え、
相手と自分のバランスが取れて
徳になるということに気づくことが大切です。

3月17日
今日は苗の草取りや
苗の土入れをしている時に、
苗を折らないよう丁寧に
作業をするように言われました。
食事の後のお皿洗いもそうなんですけれど、
一つ一つの作業を丁寧にしていると、
自分の心がだんだん綺麗に
なっていくような感じがしたので、
これからもそうしていきたいです。

午前中は、他の人の話でも
自分のことを言われているような気がして
パニックになりかけていました。
「やっぱりまた来た」と思って
午後の作業は休んだ方がいいのかな
とも思ったんですけれど、
立っていられない状態ではないし、
自分は自分、他人は他人という
見方もしないといけないと考えました。
そうしたら、パニックにならずにすんだし、
午後の作業にも出れたので、
これからは体が反応したとしても、
そういうふうに考え
行動していこうと思いました。

いさどん:
良い話です。
そうやって自分の心の動きを
客観的に判断出来るようになると、
パニックを起こさず
自分をコントロール出来るし、
他人とのキャッチボールも
上手に出来るようになります。

みほちゃん:
ちよちゃんは一生懸命すぎるくらい
丁寧に除草作業をしていたので、
そんなことを考えていたなんて
全然知りませんでした。

いさどん:
自分の心を正直に出すことによって、
よりお互いをわかり合えます。
これはすごく大事なポイントです。
自分がわかっているから
他人もわかってくれているはずと思って、
自分の心を出さないと、
全く別のことを相手が思っている場合もあるし、
自分も相手が考えていないことを
勝手に思うこともあるので、
いつも正直に自分の心を出すことが大切です。

3月19日
今日は体の疲れがどっと出ていて、
ひろみちゃんに「作業に行きます」
と言ったものの、
正直寝ていたいと思っていました。
寝ていたいという自分の癖が
出てきているのかなということと、
辛いなと思いながら作業をしていて、
すっきりしない自分は
どうなんだろうと思いました。

先週も作業を出ずに
寝ていたいと思う時期があって、
今週も今そういう時期が
来ているんですけれど、
まこっちゃんから、「それを越えると
また変わっていけるステップになるのだから、
大事に過ごすといいよ。
今はきついかもしれないけれど、
乗り越えられたら自信を持てるよ」と言われ、
辛くてもやってみようという気になりました。

昨日から両親が来ているのですが、
今までは他の人には言えても、
両親には相談することが出来ませんでした。
でも、今日想っている気持ちを
素直に両親に言ってみようと思って、
「今日実は、体がしんどいから
作業やめたくなったんやけど」
と正直に言いました。そうしたら、
「今、みんなに想っていただいているんやで、
しっかりせんと。変わるって言ったら変わるんや」
と言ってくれて、
両親ともしっかりと話すことが出来ました。
自分がまた変われたなと思ったので、
明日からも頑張ろうと思います。

いさどん:
コメントが正直で良いですね。
自分の問題点も出しながら、
その問題点に潰れることなく、
そこを克服しようというのは、
力強い考え方になってきています。
誰でも自分の好きなこと以外は
やりたくないと思うものですが、
その時に自分を押して
やっていくというのが逞しさです。
そこを出来ないとしてしまうひ弱な自分でなく、
逞しい健康的な自分を
自分の意志で選んでいるちよちゃんは、
順調にケア期間を過ごしていると思います。

2週間ぶりにちよちゃんに会ったご両親も、
ちよちゃんが明るくなって変わってきたと
喜んでいらっしゃいました。


一番のテーマは正しい自己認識

今日は、ケアを卒業した
みずほちゃんがファミリーを出発します。
1ヶ月ぶりにみずほちゃんに会ったお母さんと
いさどん、そしてみずほちゃんが
出発前にお話する機会を持ちました。

いさどん:
みずほちゃんには1ヶ月ほど
ここにいてもらいましたが、
最初はなかなか難しいなと思っていました。
この人の心の構造は
複雑なものですから。
気持ちがぶれたり、
駆け引きがあったり、
人のことを悪意にとったり、
被害妄想だったり。

しかし、ここのところ
素直な考え方になってきました。
自分の中に悪意にとる部分と
善意にとる部分があるとしたら、
物事を善意に受けとることが
出来るようになってきました。

これがどれほど身についているかは、
一度社会に出て
確認してみないとわからないことですが、
ここに訪れた時からすると、
ずっと良い状態になったと思います。
今後自立していくために、
しばらく家に戻って
社会に出るためのトレーニングを
してもらったらいいのかなと思っています。

お母さんから見て、
みずほちゃんはどうですか?

お母さん:
大分変わりましたね。
以前家で生活していた時は、
ひと声かけるにも、
「過敏に反応しないかな」と思ったり、
すごく気を使っていました。

みずほちゃん:
全然知りませんでした。

いさどん:
人が気を使っていても
自分が気づかないということは、
人が気を使っているのを
隠しているのかもしれないし、
自分が鈍感なのかもしれないけれど、
自分が人のことを考えていないから
気づかないということが大いにあります。

人の気持ちを受け取りながら、
コミュニケーションをとっていくことが大切です。

お母さん:
ここに来てしばらく会話していても、
要らない気を全く使わなくていいし、
すごく接しやすくなりました。
何を言っても、
以前のような過剰反応を起こさないし。
気に障るということがないだろうなと思うから、
思っていることを言えるし、
それが素直にすっと入っていくので、
すごく素直になって
要らない考え方がなくなったんだなと思いました。

いさどん:
この人は、持たなくてもいいような考えや、
相手に対して事実とは違うような
想いを持っているから、
そういった余分なことは持たず、
シンプルにストレートに
相手のことを受け取ったらいいよ
というように話してきました。

みずほちゃん、
大分余計な考えを持っていたと思うけどどう?

みずほちゃん:
自分が分裂していたので、
ちょっと記憶が曖昧なんですけれど、
そうだったなと思います。
今はすっきりした感じです。

いさどん;
それがどのくらい本物なのかというのを、
社会に戻って確認することが大切ですね。
昨日、一昨日、
この人が自分のことを分析している時には
非常に良い状態でした。
ここのところ、安定してきているなと思っています。

自分の中に癖がある
ということを知ってもらうのが、
今回の一番のテーマでしたが、
自分の癖を自分で
「私はこういう状態でした」と言えるようになり、
随分進歩したと思います。

お母さん:
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
どうもありがとうございました。

みずほちゃん:
本当にありがとうございました。
お世話になりました。


みずほちゃんの卒業コンサート

昨晩、1ヶ月間でケアを終了した
みずほちゃんの卒業コンサートが
開かれました。
まずは、みずほちゃんのリクエストである
♪光に向かってが木の花合唱団によって
披露されました。
この詩は鞍馬寺のお祈りの言葉で、
ここの心と同じだと感じた
みかちゃんが歌にしたものです。
その後、みずほちゃんと
いさどんのあいさつが続きます。

♪光に向かって

只ひたすらに心磨きて 神へと向かわん

天を覆う雲は厚くとも 太陽は常に大空に在る
風が来て雲を払えば 黄金の光が燦然と輝く
人の心に吹きすさぶ八風を 
苦悩の雲を吹き払う風として
真実を観る智慧の光を迎えよう

智慧の光が輝く時 
宇宙生命に生かされている万象を観る
あなたも私も花も鳥も 
みな共に生かされているこの世界
万象が織りなすいのちの相
宇宙に懸かる金色のいのちの羅網
遠い昔から受け継いできたいのちの絆
私もその中の一つのいのち
たがいに手をつなぎ 響き合ういのち
あなたも私も木も水も 
みな共に厳然と生かされている

慈愛の温もりに抱かれて
智慧の光に照らされて
豊かな活力に満たされて
今ここに生かされていることの嬉しさと有難さ
この歓びと感謝の輪を拡げよう
あなたも私もあの人もこの人も 
たがいに光合い照らし合う
明るい未来を信じ希いながら
一日一日を宝石のように大切に生きよう

全ては尊天にてまします

みずほちゃん:
今日の午前中に
もう一人の人格と話すことが出来まして、
今まで二人いた自分が
やっと一つになりました。
今やっとリアリティを持ってここにいまして、
変な話ですけれども、
正気になって初めて、
「あ、私分裂病だったんだ」
と気づいている感じです。
「正気に戻れて良かったな、
帰ってきたな」という感じでいます。
皆さん、暖かく見守って下さいまして、
本当に感謝しています。
ありがとうございました。

いさどん:
最近思うことがあります。
人間は誰もが幸せになりたい
と思っているのに、
その持っている想いが、
人を幸せにするばかりではありません。
それをどうやって伝えるのか
難しいと思っています。

一人一人、
自分の幸福観というのがあって、
それを叶えようと
自分を行き詰まらせてしまう。
固くなってしまって、
頑なになって、
行き詰まりの方に
自分を持っていく人がいます。

今、鞍馬寺の祈りの言葉の歌を聞きました。
それを聞いていると、
そこには自然というものの
正直さ、美しさ、
全く駆け引きのない姿があり、
それに倣いなさいということを
この詩では言っています。

それに対し
人間は自分を幸せにしようとして、
わざわざ企んだり、
偽りを言ったりするような
濁りが心の中に沢山あります。
それを綺麗に取ると、
この世界にあるひとつらなりの絆、
命の仕組みが現れてきます。
それが宇宙の姿であり、
私たちはその生命の仕組みの中で
それにふさわしく生きていくことが
大切なのだと思います。

体の病気をもらうことも
心の病気をもらうことも、
美しくひとつらなりになって
調和しているこの世界の姿から
自分が外れてしまった時に、
私たちに気づきを与えるために
起きる現象なのです。

そういったことに気づいていない人、
気づいていないからこそ、
行き詰まりの方に
自分を持っていってしまう人に、
わかりやすく伝えられるように
考えています。
それが相手に伝えられたら、
体の病気にしろ、
心の病気にしろ、
いとも簡単に治るのだと思っています。

今日、みずほちゃんの卒業コンサート、
こうやって私たちと縁が出来たのだから、
いってらっしゃいということで、
またいつでも帰ってくるための
見送りのコンサートでもあります。
初めてこの人に会った時、
「心に濁りがあるな、
駆け引きの心があるな、
そして悪意に物事を受け取る人」
と彼女の心に色が沢山ついていると思いました。

それをどうやって
伝えようかと思った時に、
受身の人ならば
伝えやすいかもしれないけれど、
この人は受身ではなく、
強く自分を表現する人だから
伝えにくいなと思っていました。

しかし、ここ何日か
急に話し方が変わってきました。
様子が違ってきたなと思っていました。
昨日、ケアスタート1ヶ月の面接をしました。
その時に、「この人はものが見えてきたな。
今まで自分に訪れてきた行き詰まりの原因が、
自分の中にあるということに
気づいてきたな」と感じました。

人は、問題事の種が自分の中にある
ということに気づくと、
自分の内を見ることが出来てきます。
その時に初めて、
自分自身を改めていく歩みが
出来るようになります。
自分の内に種がある
ということに気づいていないと、
外を見て外に原因を求め、
自分の内を改めることをしません。

「病気」は「気が病む」と書き、
外ではなく自分の内に問題があるのです。
自分の心に歪みがあったり、
色がついている状態が、
「病気」という状態です。
だから、自分の内を見て、
自分の中にある色や癖を取っていくことによって、
この世界の仕組みが正しく見えてくるのです。

そうすると、人は
自分自身のことも他人のことも
正しく捉えることが出来るようになります。
正しく捉えないと、
いくらものを考えても
それは違う方向に向かってしまいます。
幸せになろうと思っても、
心が歪んでいたら、
自分を苦痛にする方が幸せだ
と思って進んでしまいます。
これは当たり前のことなんですが、
人はそこに陥り自分を混乱させてしまいます。

どんなものも「幸せになりたい」と
思うことから始まっているのに、
自分の眼や姿勢、
自分の中にある歪みが
自分を混乱の方に導いてしまいがちになります。

みずほちゃんがさっき言っていた、
「私って分裂病だったんだ、
心が分裂していたんだ」ということは、
正しくものを見る自分と
歪んで見る自分とが二人いて、
分裂していたということです。
素直に正直にものを見ていくと、
一つになれます。
そして健康な状態になっていきます。
だから、良いことに気がついたなと思いました。

でもこれは、
1ヶ月間の期間があったから
そうなったのではありません。
1ヶ月かからなくても、
気づけば3日でも、1日でも、
その話を聞いて「そうですね」と
気づけば1時間でも、1分でも、
あっという間に健康になれます。

ただ、今までの歩みや
心の癖が沢山あれば、
多少時間はかかるかもしれません。
しかし、どんな人でも
気づけばたちどころに健康になります。

このことを忘れず、
幸せも不幸も発信源は
全て自分の中にあることに気づけば、
真っ直ぐ正直に生きていくことが出来ます。
そして歪んだ自分が出てきた時には、
自分で「素直に素直に」と
その自分に対して言葉をかけて歩んでいけば、
今までと違う良い人生が訪れます。

ここは「世のため人のため」にあるところですから、
ここで学んだ人はまずは自分のために、
健康に生きていってもらいたいと思います。
そして、健康になったら、
自分の健康を世の中に広める、
つまり、世の中のために生きてもらいたいと思います。

いつも卒業ということになると、
「おめでとう」というよりも、
「卒業してくれてありがとう」という想いでいます。
これをみずほちゃんにも伝えたかった。
そして、そういうふうに生きてほしいと思っています。
人が幸せに生きることは、
その人の喜びであるかもしれませんが、
その前に僕自身の喜びであるということです。
卒業ありがとう、そしておめでとう!

(ここで、卒業コンサートでは
毎回卒業者に贈られる、
♪とびきりの花が歌われました。)

♪とびきりの花♪
一緒に大地の上で 空を見上げていようよ
一緒に大地の上で 夢を描こうよ
一度きりの人生だもの とびきりの花を咲かそうよ
何べん生まれ変わっても この人生は一度きり

あなたに会えて良かったよ この広い空の下で
生まれてきて良かったよ この青い星の上に

一緒に大地の上で 空を見上げていようよ
一緒に大地の上で 夢を描こうよ
みんなの心の中にある 大きな夢を描こうよ
決して消えることのない 極彩色の夢を

あなただけの大きな花が 大地の上に開いたならば
この星はどんなにか 美しくなるだろう 
美しくなるだろう 美しくなるだろう 美しくなるだろう

いさどん:
今、気がついたことがあります。
ここにケアで訪れる人は、
問題があったからこそ来るわけです。
問題事があると、人は喜べません。
しかし、こうやって
自分が問題事の奥にある種を知って
卒業するということは、
ひょっとして問題事がなく生きている人よりも、
大切なことに気づけるチャンスが
与えられたのではないでしょうか。

だから、問題事があることは
良くないことだと皆さん思うかもしれませんが、
実は問題事があることによって、
この世界の本当のことに
目覚めることが出来るのです。
問題事があることによって
本当の生き方が出来るのならば、
問題事はありがたいものです。

病気になるのは辛いことですが、
その病気の奥にある
病気を与えたものの心に
私たちが気づいたならば、
この世界は本当に素晴らしい世界です。
この世界を美しくしていくために、
この世界は問題事をつくっているんだなということに
♪とびきりの花を聞いて思いました。

さっきの鞍馬寺の祈りの詩も、
とびきりの花も、
本当に真実を表わしていて
素晴らしいなと思いました。

「嫌だ嫌だ」と思っていた問題事が、
自分を救ってくれる。
そのことによって、
問題事のない人よりも幸せになっていく。
このカラクリを私たちは
もっと知るべきだと思います。
そういうふうに皆が気づいて
生きていけたらと思っています。