西アフリカのガンビアという国から来たウスマン。彼はガンビアの沿岸沿いにある11の村をエコビレッジ化していく取り組みに関わる中で木の花ファミリーのことを知り、持続可能なコミュニティの運営や農を学びたいということで、初のアフリカからのインターン生として来訪しました。
ある晩、木の花のメンバーに向けて、彼の国の暮らしの様子や関わっているプロジェクトについて、話をする場が持たれました。日本の多くのメディアで紹介されるアフリカのイメージとは異なり、彼の暮らすガンビアには、様々なものをみんなで分かち合い、夜、女性が一人で歩いていても安全な、平和で穏やかな暮らしがありました。そんなガンビアにも、西洋化の波が押し寄せてきていることを感じているウスマンと、ジイジが話をする時間が持たれました。
ウスマン:
木の花ファミリーでの滞在がもう少しで終了しますので、ジイジからアドバイスをいただきたいです。
ジイジ:
それはどのようなことについてですか?
ウスマン:
僕はコミュニティに暮らしているのですが、最近西洋的な考えが人々に浸透してきています。そこで、僕たちの伝統的な文化を取り戻し、人々をつなげていきたいのです。
ジイジ:
先日、あなたのプレゼンテーションを聞いていて、一番懸念したところはそこでした。ただ、西洋的価値観をすべて否定するものではありません。優れているところは大いに取り入れるべきだと思います。西洋的価値観は人々の欲望をくすぐるため、競争や自らの利益が優先され、人が調和する心をなくしてしまう危険性があるのです。もし、ガンビアで伝統的な価値観が今でも残っているのだとしたら、そういったものは人と人をつなげる前に、人と自然をつなげているもののはずなのです。
ウスマン:
はい。僕たちには伝統的な価値観があります。しかし現在、若い世代の多くはそれを知りません。なぜなら、西洋的ライフスタイルが彼らにとって優先されているからです。昔は、年配者たちが人々にこう伝えてきました。「森へ行きなさい。この種類の木の葉は薬効成分があります。この種の果物を食べると、健康に良いのです。」昔の人々はとても健康的でした。しかし、僕たちの世代は健康的ではありません。
ジイジ:
私たちが日頃多くの皆さんに伝えているデータからすると、地球上の文明には発展と衰退のサイクルがあり、西洋的な文明が主導を握る時代はもはや終焉を迎えました。ですから、今までのように人々が西洋的価値観を盲目的に追いかけるようなことはないと思います。ただ、世界中で今、一番経済的発展が遅れているところがアフリカなのですから、ある程度アフリカにも西洋的発展は今後も必要だと思います。ただ、それは短い期間です。その後に訪れる考え方は、統合的な考え方です。
私たちがここで人々に伝えているメッセージは ──── 「時代は人間たちが創っているのではなく、天体の動きによって地球上の時代が変わっていく」ということです。その視点から観ると、過去の時代についても、今の時代がなぜこのような状態になっているのかも、よく理解できます。
ここではアメリカやヨーロッパの人たちにそういったことを伝えてきました。なぜなら、以前はアメリカやヨーロッパから木の花ファミリーを訪れる人たちが多かったからです。彼らの中にはコミュニティの調査を目的に訪れる人たちが多く、それも重要なことでしたが、最近は東アジアの国からたくさんの人たちが訪れるようになりました。この人たちは新しい時代をどのように生き抜くかを模索し、暮らしのモデルを探しにここを訪れています。
そして、私の中にいつからか「アフリカ」という意識があり、いずれアフリカの人たちが訪れるようになるだろうと思っていました。そうしたら、ウスマンが訪れてくれました。あなたがプレゼンテーションをしてくれたように、アフリカの人々がコミュニティやエコビレッジのような暮らしを必要としていることを聞きました。そして、たまたまガンビアという国は平和で穏やかな国だということでしたが、私たちの持つアフリカのイメージはそういった暮らしをしようにも、治安が不安定で難しい現状にあります。そのような中で、アフリカにこそ、木の花ファミリーのような人々が助け合う暮らしは必要だと思うのです。
アフリカに特徴的なこととして、今、アフリカに4000万人以上の難民がいるということも、それ自体アフリカの問題ではなく、世界の問題だということです。私たちは日本で暮らしていますが、アフリカの問題を地球上の共通した問題として考えていかなければいけないと思ったときに、今までのようにただ物資の支援をするという方法では根本的解決にはなりません。やはり、精神性の支援があって初めて、成立することだと感じました。その精神性を伝える対象の国として、アフリカでもっとも敷居が低いのがガンビアという国なのだろうと今回感じました。
ですから、まさしくあなたはアフリカ代表ですね!あなたは「時の人」です。私たちは時を生きています。今の旬を生きているという意味では、この出会いは本当に大切な出会いです。
これから地球に訪れる新しい価値観は、まったく斬新なものです。それは太古の昔にも存在していたような、天体と対話し、自然と共に生きるというライフスタイルでもあり、さらに近代テクノロジーが自然を破壊しないような形で有効に活かされるということでもあります。ですから、ここまで築いてきた近代的な文明をすべて否定する必要はありません。そこで、何を選び、何を否定するべきかを判断する必要はあります。そこで選ぶのは、人々が選ぶのです。ですから、選ぶ人々の価値観がどこにあるのかがとても重要です。それが他者と競争し、自分だけが得しようと欲望に翻弄された選び方では、自分自身にも社会にも自然にも良くない選び方だということです。
ウスマン:
すべての存在について考える必要があるということですね。
ジイジ:
そうです。すべてのバランスを考える必要があるのです。今までの近代の人々の生き方は、自らの欲望を叶えることを豊かさだと思って追求してきました。それは悪いことではありません。優れた文明を築きましたし、テクノロジーも発達しましたが、他者を思わず、自らを優先することで、様々な生命と共に生きることを忘れてしまいました。そして、優れた伝統の価値や叡智を失ってしまったところに問題があるのです。
日本でも中国でもアメリカでもそうですが、金銭的・物質的には人々は豊かに観えるのですが、人々の心はとても孤独です。ですから、先進国と言われる国々はその段階に行き着いた結果、今の現象の背景に、人々の本当の幸せが何であるのかを教えてくれています。
木の花ファミリーでは、そういった先進国の問題点をどのように次の時代につなげ解消し、新しい時代のイデオロギーを構築していくのかを考えてきました。それについては、いくつかの読み物がありますので、参考にしてください。とりあえず、あなたの質問に対してお答えしました。
これからの時代、人々が集い群れで生きることが必然なのです。私たちが自然生態系において生命のネットワークの中で生かされていることから観ても、人間は本来そのように生きるべきです。それは、何か優れた生き方を教科書のようなものから学ぶことではありません。次の時代の生き方は古くて新しいものです。それを、集った人たちは皆で語り合い、その都度自分たちのオリジナルを創っていくことが大切です。ですから、自分たちで良いと思うことを取り入れたり、エコビレッジ運動の優れたところを取り入れたり、木の花ファミリーのような精神性を重んじる団体の良いところを取り入れたり、いろいろなところから学び、取り入れることは良いことだと思います。
しかし、一番大切なことは、皆さんがその土地に伝統的に根付いていくためには、その土地に一番必要な知恵というものがあるのです。アフリカの人たちは伝統的に星と対話し、自然と共に生きてきた生活を世界の中でも近代まで続けてきました。現在、伝統的な考えをまだ持っている長老は少なくなったかもしれませんが、その少なくなった彼らの考えも取り入れながら、たとえばあなたのような積極的な若い人たちが自分と対話し、自然と対話し、星と対話することを実践すればいいのです。そうすると、あなたの中に眠っている、大地にずっと根付いてきたDNAの芽が目覚めるのです。西洋的な考えはそういったものを眠らせてしまいます。ですから、あなたはそれを意識し、反応がなくても信じて続けていくことを心がけるべきです。そういった同じ志を持つ仲間たちがいれば、「伝統を取り戻そう」ということで皆に呼びかけ、皆でやるべきです。
実際、木の花ファミリーの知恵はどこからか借りたものではありません。私たちは今まで、天や自然と対話しながら歩んできました。そこで一番大切な気付きは、私たちが20世紀まで地球上で築いてきた西洋型の文明は終焉を迎えたということです。その文明のもたらした多くの発見は私たちに物理的進化をもたらしましたが、それは同時に人々の間に楔を打つものでもあったのです。
幸いなことに、アフリカという地にありながら、あなたの国は平和な国でした。しかし、アフリカの多くの国の現状は、そういった西洋的な価値観によって破壊されてしまいました。しかし、そのような伝統的な知恵は、その土地に根付く精霊のような魂の存在によってもたらされます。幸いなことに、あなたの国にはそういった魂の存在がまだ残っているように感じられます。そこに意識を向けていけば、そういった魂はいつでも知恵を与えてくれるでしょう。
私はあなたに、何かを肯定して何かを否定するという話をしているのではなく、善意の心で、「地球と共に」「自然と共に」「天体の意思のもとに」という心で仲間たちと生きていたら、これからの時代にふさわしい生き方ができると伝えているのです。信念を持って行動したら、必ず知恵は湧いてきます。
私は今、67歳です。30歳のときにそういった意識に目覚めました。ですから、30歳の頃まで考えていた私の人生の野望は、それによってすべて壊れました(笑)。私は若くして会社を立ち上げ、事業にも成功していました。ですから、私の家族や仕事の関係者は、私が地球のことを考えて生きること、未来の地球のことについて人々に語ることに失望しました。
ウスマン:
今までとまったく違うことを語り始めたのですね。
ジイジ:
そうなのです。ですが今、私の心はとても穏やかで、お金など物質的なことに追われていません。そして、思うことはすべて叶います。私は今、本当の意味での豊かさを掴んでいると思います。あとはこういった豊かさを世界中の人々が知り、地球が私たち人間の存在を喜んでくれるような世界になることを目指しています。明らかに、宇宙的には新しい時代のターニングポイントはすでに迎えたわけですから、私はそのような宇宙的メッセージの証として、このような考えのもとに生きています。あなたもそういう人でしょう?(ウスマン、笑)。それを自覚して生きていけば、必ず物事は成就します。
私は42歳のときに富士山麓で暮らし始めました。あれから25年が経ちました。ここへ来たときには、未来について何も想像できませんでした。しかし今は、とても充実した生き方をしていると自負しています。ですから、あなたも信じて行動するだけです。アフリカにも、そういった精神で生きる人々が増えるために、私たちは出会ったのです。あなたもそう思いませんか?
ウスマン:
はい!これは天の導きです。時が来たので、私はここに来たのです。
ジイジ:
時は確実に時代を創っていきますからね。私たちは時間をどうすることもできません。ということは、時代が変わっていくことも、私たちは受け取るだけなのです。それに抵抗せず、どんどん変わっていけばいいのです。
ウスマン:
メッセージはただ真っ直ぐに降りてくるだけですね。そして、ジイジのメッセージがアフリカに広がり、これからもっとアフリカから訪問者が来ますよ!
ジイジ:
アフリカだけではなく、世界中の大地からそういった知恵が湧き出し、天からメッセージを受ける人たちがこれからどんどん増えることも感じています。今までの文明の元も、いろいろなところで知恵が湧き出してきました。それはそれぞれの文明にふさわしくオリジナルでしたが、同時に独占するものであったり競争するものでもありました。それは優れたことではありましたが、違う意味での貧しさを産み出しました。なによりも、平等であるべき人々に格差を生みました。
私たちの体の血液が血管を通ってすべての細胞に平等に必要な分量だけ行き渡るように、地球上には水という血液の役割をするものがあり、それがすべてに平等にふさわしく行き渡り、それによって生命は生かされています。人間社会の血液はお金です。これは、特別なところに偏ってたまっていてはいけないのです。すべてのところに必要な分量に応じて行き渡るべきものなのです。それは、私たちの体の血液や地球の水と同じ性質のものなのです。そういった考えが備わっている人たちが生まれてきて初めて、そうしたお金の使われ方が可能になります。木の花ファミリーの経済システムは、世界に比べれば規模としては小さいものですが、そのモデルです。
今、世界中にそういったことを大切だと思う人々が湧き出しています。いろいろなところで新しい時代に使われるべき知恵が湧き出しています。それは、先程の競争に基づいた知恵とは異なり、ネットワークを創り調和を生みます。新しい時代の土台になる知恵は、この世界に本当の意味の豊かさ、すなわち自然の豊かさや天体の豊かさをもたらします。天体の豊かさというと、人類はまだよくわかっていません。しかし、太陽も地球も他の惑星も他の天体も、何百億年という年数をエネルギー源なしに関係性を保ちながら、調和し、宇宙を創っているのです。その仕組みになぞらえてできたのが、地球生態系です。本来、地球の自然生態系は太陽のエネルギーを与えられ、無限なる循環の仕組みによって成り立っています。その中で生きるすべての生命は、豊かに生きられるような仕組みになっているのです。
そのバランスを壊したのが近代文明です。その近代文明の限界や矛盾が今、世界中に起きています。それを維持していこうと思うと、そこには困難や不安が起きます。しかし、「次の時代が到来したのだ」ということで勇気を持って次のステージへと進めば、新しい時代の豊かさが待っています。それはある意味、地球に私たちがいながらにして、宇宙意識で生きるということです。
太古の人々は天体と対話しながら生きていました。今の時代の流れは、ある意味そこに戻るのですが、これは新しいことなのです。それは、近代的文明の発展を超え、その叡智をもって宇宙を生きるということです。今、私の中にはそのイメージが鮮明に浮かんでいます。
今、私たちは2018年を迎えています。2018年というのは、22世紀の2100年に向けての18年ではないのです。それは、1000年から2000年までの1000年紀が終わり、2000年から3000年までの1000年紀が始まったと観ているのです。そしてこの1000年紀は、人類が自我に基づく叡智を開拓する時代から、自らに内在する宇宙的可能性から来る次の時代に必要なフロンティアを探求する1000年だと観ています。ですから、私たちの内に眠る無限の能力がこれから現れてくるでしょう。そういった知恵は自然を破壊しません。自然と調和します。あなたたちは私たちの後を受け継ぐ人なのですから、それをつないでいってもらいたいと思います。
ところで、あなたは何歳ですか?
ウスマン:
32歳です。
ジイジ:
僕の半分の年齢です。僕の息子よりも若いですね。そういう意味では、私はあなたにとても期待しています。でも、責任を取り過ぎないように気楽にやってください。
ウスマン:
とても良いお話をありがとうございます。ジイジからのアドバイスを受け取って生きていきますね。
ジイジ:
その心をもってアフリカへのおみやげにしてください。それは、私からのアフリカへの贈り物です。
ウスマン:
わかりました。ジイジは人にインスピレーションを与える人なので、ジイジのアドバイスはとても良いです。僕もジイジによって刺激を受けましたので、それにより僕も前に進み続けることができます。ジイジの知恵や生き方、人生物語は、僕にとっても他の人々にとっても良い刺激となります。
ジイジ:
人間にだけではなく、自然や天体に語りかければ、必ず自分に知恵が湧いてくるようになります。なぜならば、私たちは光そのものだからです。雨そのものだからです。空気そのものだからです。大地そのものだからです。風そのものだからです。
私たちはこの世界すべてです。
本来、私たちがいのちだとしたならば、この宇宙全体と自分が同じ存在であるはずなのです。その意識に立ったとき、人間の可能性は無限に広がります。そして、宇宙から人間に託されていることが偉大なものであることがわかります。その目覚めが、今回の人類の3000年までの目覚めのポイントです。そういった意味で、20世紀までの人類は自然から心が離れていました。離れたからこそ、また元に戻ろう、生きることの本当の意味を生きようとする流れが今、生まれてきています。
ウスマン:
素晴らしいお話でした。アフリカの人々は物質的には貧しいかもしれませんが、心は豊かです。なぜなら、彼らはとても幸せだからです。
ジイジ:
あなたのプレゼンを聞いたときもそうでしたが、あなたの話を聞いて、あなたの存在を知って、私も幸せな気分です。アフリカの人々にとって、ちょうどよいお金の量と幸せのバランスが取れるともっと良いですね。近代文明の良いところがそこに還元されるといいのです。
木の花ファミリーではタイの前国王のプロジェクトに参加し、タイで村づくりを行っています。
ウスマン:
それは良いことですね。
ジイジ:
僕はタイで鯉を飼うことが夢なのです(笑)。
ウスマン:
とても美しいです!
ジイジ:
アフリカでも鯉を飼いましょう♪
ウスマン:
はい(笑)。アフリカにはあのような美しい魚はいませんが、鯉はとてもカラフルで美しいです。
ジイジ:
今、日本の錦鯉は世界中の人が注目していてブームになっています。少し問題なのは、世界中のバイヤーが日本に買い付けに来て、そういう意味でバブルになりかかっているということです。でも、あの鯉は美しいし、人の心をとても和ませてくれます。
ウスマン:
はい。先日ロータスランドに行ったとき、黄金の鯉に触りました(笑)。
ジイジ:
アフリカに黄金の鯉を持っていきましょう♪鯉はとても調和的な生き物で、新しい鯉を池に入れると、池にいた鯉たちが案内し、一緒に周遊するのです。平和とコミュニティの象徴のような生き物です。
それでは、また会いましょう。
ウスマン:
(日本語で)またね!